霜月 朔(創作)

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8/18/2025, 8:34:25 AM

終わらない夏



人の醜さに傷付き、
残酷な世の中に傷付けられ、
社会には居場所が無く、
街の片隅に隠れるように、
息を潜め、生きている私達。

昼間は余りに騒がしく、
無遠慮だから、と、
星が主役として輝く、
静かな夜を好む貴方。

満月は、
人の心を掻き乱すから、と、
貴方は、月にさえ遠慮して、
折れそうな三日月を眺め、
私に温かく、優しく、
微笑みかけてくれました。

でも、私は知っています。
貴方が、静かで薄暗い部屋の、
カーテンの隙間から、
輝く真夏の太陽を、
憧れの眼差しで、
見詰めている事を。

貴方の心を離さない、
真夏の太陽。
終わらない夏。

そんな、貴方の心を狂わせる、
太陽なんていう、
酷く無遠慮な幻影を、
消してしまいたくて。

月さえ顔を出さない、
新月の夜。
私は貴方の胸に、
月の光にも似た、
銀色の刃を突き立てました。

貴方から溢れ出す赤色が、
黒い大地を濡らしていきます。
これで貴方は、
永遠に私だけのもの。

ゆっくりと、夜が明けます。
早起きな真夏の太陽が、
真っ赤に染まった、
貴方を、私を、照らします。

目を開けぬ貴方。
目を閉じる私。
登る朝日。
まだ、終わらない夏。


8/17/2025, 7:32:40 AM

遠くの空へ

8/16/2025, 4:50:30 AM

!マークじゃ足りない感情



残酷な世の中で、
何も与えられず、
傷だらけになり、
社会から見捨てられ。

たったひとり。
飢えと孤独に震えていた、
ボロボロの私に、
救いの手を差し伸べてくれた、
優しい貴方。

冷たく醜い他の人間とは違う、
貴方という人を知り、
私は初めて、
愛を知りました。

私にとって、
貴方は世界の全てだったのに、
貴方には、
私以外の世界が存在したのです。

だから、私は。
誰も知らない場所に、
貴方を閉じ込めました。
貴方が私以外の世界を、
二度と見ないように。

陽の射さない、地下の牢獄。
蝋燭の僅かな灯りが、
仄かに貴方と私を照らし、
湿り気を含んだ空気が、
二人を包み混みます。

もう、苦しまなくていいのです。
貴方を苦しめる物は、
この部屋には、
何一つ無いのですから。

…そう。
私が貴方に捧げたのは、
!マークじゃ足りない感情。
二人きりの永遠の世界。

誰よりも、愛しい貴方。
私はここに居ます。
ですから。
このまま、二人で…。

8/15/2025, 6:57:54 AM

君が見た景色



小さな頃から、
ずっと一緒に居た、
俺と君。

握り締めた小さな掌。
俺を見上げる、綺麗な瞳。
ずっと、ずっと、
護りたいと思ってた。

優しい黄色の菜の花と、
桃色の春の風。
入道雲と夏の空の色、
白と蒼のコントラスト。
赤や黄色に染まる、
山や木々の切なさ。
物悲しい枯れ木に咲く、
冷たい白い雪化粧。

君と俺は、
幾つもの季節を繰り返した。
お互い、少しずつ、
大人になっていったのに、
俺はそれを認めたくなかったんだ。

俺が君との想い出の中に、
立ち止まっている間に、
君は、外の世界へと、
飛び出していった。

気が付けば。
君と隣には、
俺の知らない男が居て、
君は幸せそうに笑っていた。

ねぇ。
俺が過去の夢の中にいた間に、
君が見た景色は、
どんな色をしていたの?

それを君に聞くことは、
出来ないのかな?
だって、俺は、
大人になった君の隣には、
立てなかったんだから。

8/14/2025, 8:44:44 AM

言葉にならないもの

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