霜月 朔(創作)

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終わらない夏



人の醜さに傷付き、
残酷な世の中に傷付けられ、
社会には居場所が無く、
街の片隅に隠れるように、
息を潜め、生きている私達。

昼間は余りに騒がしく、
無遠慮だから、と、
星が主役として輝く、
静かな夜を好む貴方。

満月は、
人の心を掻き乱すから、と、
貴方は、月にさえ遠慮して、
折れそうな三日月を眺め、
私に温かく、優しく、
微笑みかけてくれました。

でも、私は知っています。
貴方が、静かで薄暗い部屋の、
カーテンの隙間から、
輝く真夏の太陽を、
憧れの眼差しで、
見詰めている事を。

貴方の心を離さない、
真夏の太陽。
終わらない夏。

そんな、貴方の心を狂わせる、
太陽なんていう、
酷く無遠慮な幻影を、
消してしまいたくて。

月さえ顔を出さない、
新月の夜。
私は貴方の胸に、
月の光にも似た、
銀色の刃を突き立てました。

貴方から溢れ出す赤色が、
黒い大地を濡らしていきます。
これで貴方は、
永遠に私だけのもの。

ゆっくりと、夜が明けます。
早起きな真夏の太陽が、
真っ赤に染まった、
貴方を、私を、照らします。

目を開けぬ貴方。
目を閉じる私。
登る朝日。
まだ、終わらない夏。


8/18/2025, 8:34:25 AM