美しい
(ごめんなさい。
なにも思いつきませんでした…。
思いついたら書きます)
どうしてこの世界は
どうしてこの世界は、
こんなにも醜いのでしょう?
親の愛を得られず、捨てられ、
他人は蔑む視線を向けるだけ。
街の片隅の暗がりにさえ、
居場所はありませんでした。
それでも、貴方は。
偽物の煌びやかさを纏った、
残酷な社会の外で、
塵屑に埋もれた私に、
手を差し伸べてくれました。
ですが、貴方もまた、
社会に絶望し、他人に傷付けられ、
そんな闇の中で、
僅かな希望を探して、
藻掻いていたのですね。
どうしてこの世界は、
こんなにも残酷なのでしょう?
人間の差別の目は、
規格から外れた私達に、
石を投げつけ、
隠れる場所を奪い、
社会から排除するのです。
価値のない人間は、
人として生きる事さえ赦されず、
路傍に転がる小石の如く、
無視され、蹴り飛ばされ、
そして、風雨に晒されます。
それでも。
貴方の優しい笑顔と、
温かい手があるから、
私は私でいられたのです。
どうしてこの世界は、
こんなにも脆いのでしょう?
私も貴方も、
心も身体も傷だらけで。
それでも、貴方は、
闇の中にいる私の、
唯一の光だったのです。
貴方がいるから、
私は生きていられます。
貴方は私の希望。
貴方は私の安らぎ。
…貴方は私の全て。
だから。
貴方の鼓動も温もりも、
最期の呼吸までも奪い取り、
私のものにします。
身体も心も魂も、
私と一つとなりましょう。
どうしてこの世界は、
こんなに美しいのでしょう?
貴方がいて、私がいる。
他には、何もなく、
…ただ、それだけ。
君と歩いた道
幼い頃から、
まるで兄弟の様に、
共に育ってきた、
誰よりも、大切な君。
とても優しくて、
でも、泣き虫で。
そんな君の小さな手を、
幼い俺は、そっと握った。
大きくなるにつれて、
俺にとっては、君は、
特別な存在になったけれど、
君にとっては、俺は、
兄の様な存在のままだったんだ。
お互いに、大人になって。
君が、俺の手を離して、
君の道を歩き出しても、
俺は、兄の仮面を外せないまま、
君の背を見詰めてる。
君と歩いた道から、
遠くに見えるあの山並みは、
あの頃と何も変わらないのに。
俺の隣に、君は居なくて。
刺すような胸の痛みを、
溜息で誤魔化す。
君と歩いた道が、
静かな夕日に照らされる。
悲しい程に赤く染められた道に、
残される、独りぼっちの影。
俺は独り、
想い出の中の君の、
小さな手の温もりを求めて、
空っぽの手を、握り締める。
夢見る少女のように
貴方はいつも、
苦しんでいました。
目立たぬように、
身体を丸め、影を歩き、
嘆きや呻きを漏らさぬように、
奥歯を噛み締めて。
きっと貴方は、
人と人が、騙し合い奪い合い、
憎悪と腐臭で満ち溢れた、
こんな穢れきった世の中で、
生きていくには、
余りに優しすぎたのです。
そう。
塵屑の様に捨てられ、
壊れかけていた私に、
手を差し伸べるほどに、
貴方の心は、温かく美しく、
脆かったのです。
いつか誰かに、
貴方を壊されてしまう。
いつか何処かで、
貴方は壊れてしまう。
いつの間にか、私の中に、
何かが生まれました。
だから、私は…。
夢見る少女のように、
荒唐無稽な夢を語り、
貴方の温もりに、
身を沈め、溺れます。
私は少女ではありません。
だから、夢見るだけでは、
身体を満たせないのです。
身も、心も、
私で埋め尽くし、
貴方と一つになりたいのです。
貴方は、どこまでも優しく、
激しい愛情と情欲の波に囚われ、
貴方の全てを求める私を、
受け止めてくれました。
なのに、私は…。
夢見る少女のように、
不確かな瞳で微笑み、
貴方の首元に、
そっと手を伸ばします。
私は少女ではありません。
だから、夢見るだけでは、
心を満たせないのです。
生命も、魂も、
私で埋め尽くし、
貴方と一つとなりたいのです。
貴方は、どこまでも温かく、
狂気にも似た感情に囚われ、
貴方の全てを奪おうとする私を、
受け止めてくれました。
旅立ちを前に、
物言わぬ貴方の隣で、
夢見る少女のような、
天衣無縫な誓いを立てます。
永遠に、貴方の側に…。
さあ行こう
君はずっと苦しんでいた。
親の愛を知らず、
社会から弾き出され、
傷だらけの心と身体で、
独り、明けぬ闇の中で、
膝を抱えていた。
私は君に手を差し伸べた。
偏見という冷たい刃と、
無関心という冷たい棘が、
身を斬り付けるこの世の中で、
せめて私だけは、
君の味方でありたかった。
君は、私の手を取り、
絡み付く闇の中から、
這い上がろうとした。
私は君に寄り添い続けた。
月が綺麗な夜だった。
君は小さく微笑んだ。
その微笑みは、
酷く虚ろだった。
君は私の手を握り、言った。
…全てを終わりにしたい、と。
私は、初めて知った。
私の手の温もりが、
君を苦しめていたのだと。
私は頷いた。
…君を一人にはしないよ、と。
私の言葉に、
君は嬉しそうに微笑んだ。
その微笑みは、
とても透明だった。
…さあ行こう。
そして、君と二人、
夜の海辺へと歩き出す。
波の下には、
美しい都があるという。
…さあ行こう。
君が心から笑えるように。
永遠に、君を護るから。