霜月 朔(創作)

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1/10/2025, 8:54:57 AM

星のかけら




俺はずっと、
襲い来る黒い悪意に囚われ、
身動きも取れず、
藻掻き苦しんでいた。

そんな俺の帰りを、
君は、信じてくれていた。
俺の孤独な戦いを、
ただ、黙って見守りながら。

君は、俺の帰る場所を護り、
新しい希望の種を、
世界の果てから、掻き集め、
それをそっと育てていた。

だけど。
俺がそれを知ったのは、
絶望の淵を這い上がり、
君が護り続けた、光の場所に
戻ってきた後だった。

君が集めたもの、
それは、きっと星の欠片。

だから、俺は、
その煌めきの欠片ごと、
君を抱き締めたいんだ。

星の欠片は、
ひとつひとつが美しく輝き、
いつの日にか、
この世の暗闇を照らす、
星座になるのだから。

1/8/2025, 3:24:48 PM

Ring Ring…




星空の下、
ボクは一人、静かにステップを踏む。

蒼い月のスポットライトが、
ボクの影を、長く引き伸ばす。

ボクは踊る。
影をパートナーに。
孤独なワルツに、身を任せる。

Ring Ring…

ステップを踏む度、
切なく響く鈴の音。

懐に忍ばせてる、
アイツがくれた、小さな御守り。
その、奥ゆかしくて可憐な鈴は、
今も、ボクを縛るように、
泣いてるんだ。

Ring Ring…

音の一つひとつが、
哀しみの調べを、紡いでく。
鈴の響きに、密かに乗せた、
ボクの想いも、その儚い音色も、
アイツの耳には、届かないだろう。

Ring Ring…

それでも、ボクは踊り続ける。
月が沈む、その瞬間まで、
月に見守られ、影を抱き締め、
…小さな鈴の音と共に。

1/7/2025, 10:41:14 AM

追い風


貴方はいつも。
迷える俺の、
行き先を照らしてくれる、
道標だった。

必死に追い続けた、貴方の背中は、
俺にとっては、夢そのものだった。

だけど。
希望だった貴方は、
突然、この世界を去った。
まるで、風が止むように、
何の前触れもなく。

残された俺は、
未熟なまま、独り、
先の見えない荒野に、
立ち尽くしている。

それでも。
俺の中の、貴方は消えない。
想い出の中で生きる貴方は、
今でも鮮やかに、
俺を見詰めている。

困難が立ちはだかっても、
絶望が眼前を覆い尽くしても、
貴方の笑顔が、
そっと、俺の背中を、
押してくれるんだ。

優しく、力強く、
俺を、明日へと運んでくれる。
…追い風のように。


………



君と一緒に



君は私を見詰めていた。
その澄み渡る蒼い瞳には、
喜びと哀しみが、
静かに揺れていた。

君のその手には、
銀に輝く刃が握られている。
静寂を切り裂くように、君は囁く。
…もう、苦しまなくていいのです。
私が、貴方をを救ってあげます。

この酷く歪んだ世界で、
未練と後悔に苛まれ、
孤独の鎖に縛られながら、
血に塗れ、醜態を晒し続ける私。

こんな私を、君は見捨てなかった。
この世に生きていくには、
余りにも純粋で、優し過ぎる君が、
救いの手を差し伸べてくれた。

…あなたを独りにはしません。
私も一緒に行きますから。
そう言って、微笑んだ君の姿は、
儚く、哀しい程に美しかった。

ならば、君と一緒に。

その微笑みに、私は身を委ねた。
目を閉じ、君の手に全てを預ける。

銀色が閃き、赤が滴る。
終焉の静寂の中。
静かに響いたのは、
何処か異質な…君の声。

コレデアナタハ、
エイエンニ、ワタシダケノモノ…

1/6/2025, 6:16:46 AM

冬晴れ



冬のある日、
俺は独り、冷えた街を彷徨う。
寒さに肩を竦め、息を白く吐きながら、
足早に過ぎる人波に、逆らって歩く。

仕事に追われつつも、
楽しい仲間に囲まれ、
親友として君が側にいる日々。
けれど、それでも。
心の奥にぽっかりと空いた、穴。
刃の様な北風が吹き抜ける度、
その空洞は広がり、俺を凍えさせる。

冬晴れの空は、
余りに澄み渡り、何処までも高い。
その蒼さは、何処までも透明で、
まっすぐで凛とした君みたいで。
青空を見上げる度に、
胸の奥が締め付けられる。

君と過ごす日々が、
親友という言葉で縛られる現実。
隣にいるだけで幸せだと、
そう、自分に嘘をついてきたけれど。
心の奥底では、君に惹かれている自分を、
隠し切れないんだ。

冬晴れの空に手を伸ばしてみる。
冷たい風が掌をすり抜け、
僅かな温もりすら奪い去っていく。
掴めるものは、只の空虚。
どれだけ手を伸ばしても、
この地上からでは届かないんだ。

まるで、俺と君…みたいだ。
君はあまりにも眩しく、
俺の手の届かない場所にいるから。
俺はただ、青空を見上げながら、
自分の無力さに、目を閉じた。

1/4/2025, 4:55:56 PM

幸せとは



風花が寒風に舞う、冬の日。
街を行き交う人々は、
柔らかな光に包まれている。
幸せそうな恋人達の姿に、
独りきりの自分が、惨めに思えて、
胸の奥に黒い靄が生まれた。

幸せとは。
失って初めて気付くもの、
なのかも、知れない。
気付かない振りをしていた私も、
今になって悟る。
あの頃の温かな日々が、
何よりも尊い『幸せ』だった、と。

君の隣にいたあの頃、
私は君の微笑みと言葉に癒され、
穏やかに過ごしていた。
ずっと嫌いだった、
弱い自分さえも、
赦す事が出来たのに。

けれど、それを。
私は、自ら壊してしまった。
繊細な硝子細工を、
手の中で砕く様に、
その輝きは、粉々になり、
静かに地に散っていった。

そして、
空っぽの両手を見つめ、
二度と戻らないあの頃に、
未だ心を囚われながらも、
深い溜息を吐くしか出来ない。

それは、まるで。
硝子の向こうに広がる景色の様に、
キラキラとした憧れの風景。
こんな私には、
二度と手の届かない…幸せ。


……………


小雪がひらり、舞い落ちる冬の日。
街を歩く、人々の笑顔は、
優しい笑顔に包まれてる。
肩を寄せ合う恋人達の姿は、
遠い物語の一場面の様で、
胸の奥が少しだけ、痛んだ。

幸せとは。
追えば遠ざかる蜃気楼、
なのかも知れない。
気付いていたけれど、
気付いてない振りをした。
どんなに必死に手を伸ばしても、
光の中へ溶けていくんだ…って。

貴方が隣にいてくれたあの頃、
私は貴方をそっと包み込み、
静かな幸せを感じていた。
ずっと苦手だった、
冷淡な自分さえも、
暖かさの中で消えていたのに。

けれど、それは。
ある日、突然消えてしまった。
シャボン玉が弾ける様に、
触れることもできず、
ただ、消えた後に残る空虚だけが、
私の手の中にあった。

そして、
握り締めた空っぽの手から、
零れ落ちた記憶の欠片を拾い上げ、
届かないと知りながら、
貴方の名をそっと呼び掛ける。

それは、まるで。
想い出の硝子の欠片を集めた、
新しい光が織り成す、プリズム。
貴方と一緒に、
もう一度掴み取りたい…幸せ。


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