霜月 朔(創作)

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追い風


貴方はいつも。
迷える俺の、
行き先を照らしてくれる、
道標だった。

必死に追い続けた、貴方の背中は、
俺にとっては、夢そのものだった。

だけど。
希望だった貴方は、
突然、この世界を去った。
まるで、風が止むように、
何の前触れもなく。

残された俺は、
未熟なまま、独り、
先の見えない荒野に、
立ち尽くしている。

それでも。
俺の中の、貴方は消えない。
想い出の中で生きる貴方は、
今でも鮮やかに、
俺を見詰めている。

困難が立ちはだかっても、
絶望が眼前を覆い尽くしても、
貴方の笑顔が、
そっと、俺の背中を、
押してくれるんだ。

優しく、力強く、
俺を、明日へと運んでくれる。
…追い風のように。


………



君と一緒に



君は私を見詰めていた。
その澄み渡る蒼い瞳には、
喜びと哀しみが、
静かに揺れていた。

君のその手には、
銀に輝く刃が握られている。
静寂を切り裂くように、君は囁く。
…もう、苦しまなくていいのです。
私が、貴方をを救ってあげます。

この酷く歪んだ世界で、
未練と後悔に苛まれ、
孤独の鎖に縛られながら、
血に塗れ、醜態を晒し続ける私。

こんな私を、君は見捨てなかった。
この世に生きていくには、
余りにも純粋で、優し過ぎる君が、
救いの手を差し伸べてくれた。

…あなたを独りにはしません。
私も一緒に行きますから。
そう言って、微笑んだ君の姿は、
儚く、哀しい程に美しかった。

ならば、君と一緒に。

その微笑みに、私は身を委ねた。
目を閉じ、君の手に全てを預ける。

銀色が閃き、赤が滴る。
終焉の静寂の中。
静かに響いたのは、
何処か異質な…君の声。

コレデアナタハ、
エイエンニ、ワタシダケノモノ…

1/7/2025, 10:41:14 AM