霜月 朔(創作)

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11/9/2024, 7:38:39 PM

脳裏



冷たい静寂の中、
暗い部屋に響くのは、
只…自分の呼吸だけ。

影が影を呑み込み、
見えない手が、
俺の心を鷲掴みにする。

思考が薄れ、意識が遠退く度、
過去の残像が、脳裏を過る。

映し出されるのは、
ひび割れた、思い出。

懐かしいアイツの顔が、
歪んで、崩れて、
掌から溢れていく。

声にならない叫びが、
闇を切り裂く。
脳裏に焼き付くのは、
もう戻らない、アイツの面影。

記憶が心を蝕む。
アイツと幸せな思い出さえ、
全て、真っ赤に染まり、
アイツの断末魔と重なる。

アイツを助けられなかった。
その悔恨と無念に、
雁字搦めになって、
俺は闇に堕ちていく。

……。

暗闇の中。
俺は必死に手を伸ばす。

…こんな俺でも、
赦されるのなら。
どうか、この手を取ってくれ。

11/8/2024, 6:48:28 PM

意味がないこと



貴方は、自分の命を捨て、
私を助けてくれました。

でも、私は。
貴方に生きていて、
欲しかったのです。

貴方のいない世界に、
ただ一人残されて、
生きる事の苦しさに、
何故、貴方は、
気付かなかったのでしょう。

貴方の居ない世界で、
生きていく事なんて、
私にとって、
意味がないこと、なのです。

食べる事も、眠る事も、
息をする事さえ、
今の私には、もう、
意味がないこと、なのです。

だって。
貴方はもう、
この世の何処にも、
居ないのですから。

私は、貴方の元へ行きます。
私はもう一度、
貴方の「愛してる」の言葉が、
聞きたいのです。

もし、再び貴方と出会えたら。
貴方は私を、
抱き締めてくれますか?

11/7/2024, 9:30:43 PM


あなたとわたし



私と貴方は、
夜にだけ寄り添う、
幻の恋人。

夜明けが近づくけれど、
まだ、夢の中で、
心はそっと重なり合う。

月明かりが消えても、
貴方の温もりは、
私の胸に残る。

でも、朝が来れば、
私たちはそれぞれ、
現実へと戻るだけ。

名前のない関係。
恋人とは呼べず、
友達とも違う。

けれど、心だけは、
繋がっていると信じたい。
この一瞬の夢の中で、
貴方は確かに、
私のものだったから。

また夜が来れば、
貴方は私に微笑んでくれるかな?
それとも、
この一夜が、最後の夢なのかな?

未来を知る事は出来ないから、
今はただ、この思い出に、
身を委ねて、眠りたいんだ。

いつかまた。
貴方と手を重ねる夜が来る事を、
願いながら、
そっと目を閉じる。

朝が来れば、
貴方と私は、
互いの影を心に刻んで、
日常へと溶けていく。

「さよなら」じゃなくて、
「またね」って、呟いて。

11/6/2024, 5:47:27 PM

柔らかい雨



柔らかい雨が降る。
街の灯も、森の緑も、山の稜線も、
灰色の霧に溶け込んでいく。

そして、お前も。
柔らかな雨の狭間に
姿を隠してしまった。

立ち去る前に見せた、
どこか淋しげな笑顔が、
余りに儚くて。

俺は、柔らかい雨の中、
お前を探し、彷徨い歩く。

お前は独り、
柔らかな雨の中に
立ち尽くしていた。

「柔らかい雨だから、
濡れたりはしませんよ」と。
強がるお前を、
そっと抱き寄せる。
その身体は、とても冷たかった。

…こんなに冷たくなるまで、
ひとりで耐えていたのか。

俺は言葉を飲み込む。
今のお前には、
重荷になるだろうから。

柔らかい雨が降る。
お前の双眸から、
静かに溢れる雨粒を、
俺は気付かぬ振りをして、
お前を、抱き締める。

ただ静かに、
お前を抱き締め続ける。
…雨が止むまで。

11/5/2024, 7:07:46 PM

一筋の光


俺は暗闇の底にいた。
全てを失い、
抜け殻の様に斃れていた。
何も残ってはいなかった。
最愛の友も、希望も、信念も、
…生きる意味さえも。

憎しみが俺を支配する。
全てを壊したい。
心の奥底から湧き上がる衝動が、
この世界を、不条理を、運命さえも、
破壊し尽くせと、俺を誘う。

神と刺し違えてでも、
終わりにしたい。
…そう願った。

俺は闇の中で、
全ての破滅を望む。
悪意が魂を蝕み、
悪魔が囁きかける。

その時。
一筋の光が、
鋭く闇を裂いた。

最後の希望にすがるように、
俺は、手を伸ばす。

「お前は、独りじゃない」

そんな声が、
聞こえた気がした。

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