霜月 朔(創作)

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脳裏



冷たい静寂の中、
暗い部屋に響くのは、
只…自分の呼吸だけ。

影が影を呑み込み、
見えない手が、
俺の心を鷲掴みにする。

思考が薄れ、意識が遠退く度、
過去の残像が、脳裏を過る。

映し出されるのは、
ひび割れた、思い出。

懐かしいアイツの顔が、
歪んで、崩れて、
掌から溢れていく。

声にならない叫びが、
闇を切り裂く。
脳裏に焼き付くのは、
もう戻らない、アイツの面影。

記憶が心を蝕む。
アイツと幸せな思い出さえ、
全て、真っ赤に染まり、
アイツの断末魔と重なる。

アイツを助けられなかった。
その悔恨と無念に、
雁字搦めになって、
俺は闇に堕ちていく。

……。

暗闇の中。
俺は必死に手を伸ばす。

…こんな俺でも、
赦されるのなら。
どうか、この手を取ってくれ。

11/9/2024, 7:38:39 PM