友達
貴方にとって、私は
今も…友達でしょうか?
私は、ずっと貴方のことを
友達だと思っていました。
幼い頃は、一緒に遊び、学び、
大人になっても、
悩みを分かち合い、
共に過ごしてきました。
そんな中で。
私は貴方を、只の友達だと
思えなくなっていました。
ですが、この気持ちを、
貴方に隠しているのです。
もし、この恋心を
貴方に伝えてしまったら、
きっともう、
貴方とは、友達では、
居られないでしょうから。
だから、私は。
この想いを、心の奥に隠して、
幼い頃と変わらず、
貴方の友達として、
微笑みかけるのです。
貴方にとって、私は
今も…友達でしょうか?
行かないで
君はいつだって、
皆の頼れる存在で、
優しくて、格好良くて。
俺はずっと、
そんな君に憧れてた。
でも、
君が俺の側にいてくれたのは、
俺が、君の友達の中で、
一番頼りなくて、
放っておけない存在だったから。
…だよね。
君にとっての俺は、
きっと。
心配で目を離せない、
頼りない友達でしかない。
その事は、ずっと分かっていた。
それでも、君の側にいられるなら。
俺は、その優しさに、
甘えていたんだ。
だけど、君に新しい後輩ができた。
仕事も、慣れない事も、
全て、一から教えてあげるべき、
真っ新な存在だ。
君が、彼の側にいる時間が、
俺よりも増えるのは、当然だよね。
どんなに優れた人でも、
初めは、何も知らないんだから。
行かないで。
心が締め付けられる。
叶わない願いが、
俺の胸の奥で、揺れている。
行かないで。
でも、俺にはこの言葉を、
君に伝える勇気なんて、
何処にもないんだ。
行かないで。
だから、俺は。
心の中で呟くんだ。
…君には聞こえない声で。
どこまでも続く青い空
貴方の居ない日々は、
果てしなく、暗い灰色。
全てがモノクロームでした。
咲き乱れる春の花々も、
夏の空に浮かぶ入道雲も、
赤や黄色に彩る木々も、
雪化粧した銀世界も、
貴方が居なければ、
何もかも、色を持たなくて。
私は、空を見上げます。
爽やかな風が吹き抜け、
頭上に広がるのは、
何処までも続く青い空。
そして、私の隣には…。
漸く再会できた、
誰よりも愛しい貴方。
貴方に再び会えて。
貴方がまた隣に居てくれて。
貴方が微笑み掛けてくれて。
空は、こんなにも、
美しかったのだと、
私は、漸く思い出しました。
青い空も。白い雲も。
赤い山も。黄色い木々も。
銀色の森も。白銀の野原も。
桃色の花も。若葉色の草も。
貴方と一緒なら、
私の世界は、こんなにも、
鮮やかに、彩られるのですから。
だから、もう二度と。
私を一人にしないで下さいね。
衣替え
半年前には、
当たり前に袖を通していた服も、
今は少しだけ、新鮮に映る。
爽やかな色のシャツや、
お気に入りのTシャツを、
仕舞い込むのは、
どこか寂しいけれど。
柔らかくて、温かな、
セーターに顔を埋めると、
懐かしい、あの冬の日の、
柔軟剤の香りが、ふわりと漂った。
鏡の前で、
ひとり、ファッションショー。
マフラーや手袋を手に、
少しだけ気の早い、
冬の装いを思い描いてみる。
だけど。
全然進まない、衣替え。
気が付けば、ボクは、
どんどん楽しくなっていた。
コートの出番は、もう少し先かな。
そう思いながら、
少しだけ、羽織ってみて、
鏡の前でくるりと回ってみる。
「遊んでばかりいないで、
さっさと作業を済ませなさい。」
いつものように、
彼奴のお説教が、
飛んできたけれど、
今のボクには、その声さえ、
不思議と、心地良かったんだ。
冬は、もうそこまで、
やって来ているんだ。
クリスマス、大晦日、お正月。
楽しい冬が、きっと、
ボク達を待っているから。
声が枯れるまで
オレはオレを罰する。
出来損ないのオレを、
叱り付ける為に。
何度も、痛みを身体に刻み込む。
青黒い痣が、皮膚を覆い尽くし、
裂けた皮膚から、血が滲む。
それでも、
オレはオレを赦さない。
赦しを請い、
声が枯れる迄、
虚空に向けて叫ぶ。
今は亡き母に向かって、
何度も謝罪を繰り返す。
…御免なさい。
…どうか、赦して下さい。
…良い子になるから。
出来損ないのオレを、
叱ってくれる母は、
もう居ない。
だから、
オレはオレを罰する。
生きている証を、
痛みで確かめる様に。
痛みによって、
縛られた身体が、
オレの代わりに声を上げる。
声が枯れる迄。
それは。
血の滲む叫びとなって、
響いた。
「誰か…助けて…」と。