霜月 朔(創作)

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衣替え


半年前には、
当たり前に袖を通していた服も、
今は少しだけ、新鮮に映る。

爽やかな色のシャツや、
お気に入りのTシャツを、
仕舞い込むのは、
どこか寂しいけれど。

柔らかくて、温かな、
セーターに顔を埋めると、
懐かしい、あの冬の日の、
柔軟剤の香りが、ふわりと漂った。

鏡の前で、
ひとり、ファッションショー。
マフラーや手袋を手に、
少しだけ気の早い、
冬の装いを思い描いてみる。

だけど。
全然進まない、衣替え。

気が付けば、ボクは、
どんどん楽しくなっていた。
コートの出番は、もう少し先かな。
そう思いながら、
少しだけ、羽織ってみて、
鏡の前でくるりと回ってみる。

「遊んでばかりいないで、
さっさと作業を済ませなさい。」

いつものように、
彼奴のお説教が、
飛んできたけれど、
今のボクには、その声さえ、
不思議と、心地良かったんだ。

冬は、もうそこまで、
やって来ているんだ。

クリスマス、大晦日、お正月。
楽しい冬が、きっと、
ボク達を待っているから。

10/22/2024, 6:04:26 PM