霜月 朔(創作)

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7/5/2024, 5:39:07 PM

星空



飽きずに振り続ける初夏の雨。
曇天の日が続く梅雨の季節。
その合間に。
ふと顔を見せる、星空。
何時もより、少しだけ貴重に思える、
夜半の星の煌めき。

一際明るい星。
目を凝らさなければ見えない小さな星。
ぼんやりと輝く星。
青い星、赤い星、白い星。
星空は、様々な星を、
全て受け入れて、
こんなにも美しい。

大人も子供も。
豊かな人も貧しい人も。
善人も悪人も。
夜空を振り仰ぎ見れば、
星達は、等しく輝いてくれるんだ。

その事が、俺の不甲斐無さを、
星達が受容してくれているみたいで、
明日は会えないかも知れない綺羅星に、
そっと、溜息を零す。

こんな駄目な俺でも。
星だけは赦してくれるんだって。
星空の下で、少しだけ自惚れてみるんだ。

7/4/2024, 6:27:22 PM

神様だけが知っている


何故、自分は生きているのだろう。

戦いに明け暮れ、
何度も酷い怪我を負った。
だが、死ななかった。

身体の一部を失い、
生死の境を彷徨った。
それでも、死ねなかった。

昨日迄俺の隣で戦っていた仲間は、
傷付き、倒れ、
いとも簡単に、この世を去った。

櫛の歯が抜ける様に、
仲間が鬼籍に入り、
俺は、身体も心もボロボロで、
何処も彼処も傷跡だらけなのに、
俺は未だこの世に齧り付く。

こんな俺が、
何故生かされているのか。

それは。
神様だけが知っている、
のだろう。

ならば俺は。
この命尽きる迄、
歯を食い縛り、藻搔きながら生きてやる。

7/3/2024, 5:41:11 PM

この道の先に


真っ暗な道を進んでいきます。
足に、錆び付いた鉄の鎖で結ばれた、
罪と言う名の重い重りを引き摺って。

私の身体は、罪を重ねた後悔で、
雁字搦めで、
動く度に、軋む様な音を立てます。

私は行く当てもなく、歩きます。
兎に角、前に進まないと、
私の背後から何か醜悪な物が、
私を呑み込もうと追って来ている。
…そんな気がするのです。

真っ暗な道。
この道の先に、
明るい未来が待っているのか?
私の罪を断罪する者が待ち受けているのか?
将又、道が途切れて居るのか?
それは、分かりません。

しかし。それでも。
私を只管追い掛けてくる、
得体の知れない青黒く燃える闇から、
浅ましくも、逃れたいと願う私は。
この、真っ暗な先の見えぬ道を、
藻搔きながら進むしか無いのです。

7/2/2024, 5:43:10 PM

日射し


初夏の日射しがキラキラと輝き、
街に咲く花々は、
春の柔らかなパステルカラーを纏った、
優しげな色合いから、
夏の煌めきに負けない強さの、
鮮やかな色彩へと様変わりして。

その、痛い位明るい日射しに、
花々は一気に背を伸ばして、
エネルギーを享受する。

だけど。
その余りに力強い日射しは、
オレの心の奥の影を、
より黒く深い物に変えてしまう。

光は闇を強くする。
そして、その光が強ければ強い程、
闇もまた深くなる。

照り付ける太陽の元。
深淵の闇に足元を捉えられ、
闇の炎に覆われてしまわないように、

オレは。
空から照り付ける日射しとは、
真逆の光に向かって、
必死に手を伸ばす。

7/1/2024, 5:48:41 PM

窓越しに見えるのは


仕事の合間に、ふと、窓の外を眺めた。
青い空には、太陽が輝いてた。
今日は良い天気だな、って、思って。
何か、テンションが上がった気がした。

と。
キラキラと輝く太陽の元、
憧れの先輩が歩いてきたのが見えた。
俺は思わず、窓を開けて、
先輩に声をかけようとした。

その瞬間。
先輩に小走りに駆け寄る人影が、一つ。
すると、先輩は、
その人に、飛び切りの笑顔を向けた。
そして、先輩とその人は、
とても親しげに、一緒に歩き出した。

窓越しに見えるのは、
幸せそうな先輩と、
俺じゃない誰かが、
親しげに連れ立って歩く姿。

隣に立つ『誰か』に、
優しくに微笑みかける先輩は、
ホントに幸せそうで。

なのに、俺は…。
窓越しに見える憧れの先輩を、
胸の痛みを堪えながら、
只、黙って見詰めるだけ。

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