霜月 朔(創作)

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5/16/2024, 3:05:29 PM

愛あれば何でもできる?



私の中には、
私の知らない私が居て。
私は私が恐ろしいのです。

もう一人の私は。
愛する貴方を護る為なら、
真実に口を噤むことも、
親友を騙して素知らぬ顔で微笑む事も、
仲間の命を切り捨てる事さえ、
平気でしてきました。

そして。もう一人の私は。
愛する貴方を護る為なら、
友に刃を向ける事も、
神の教えに背く事も、
悪魔に魂を売り渡す事さえ、
平気で出来るでしょう。

…愛があれば何でもできる?

もし、貴方からそう問われれば、
私は困惑した顔で、首を横に振るでしょう。
…流石に、出来ない事もありますよ。
と。

ですが。
もう一人の私は、微笑みながら頷くでしょう。
…愛する貴方を殺める事以外なら
何でも出来ますよ。
と。

5/15/2024, 3:34:28 PM

後悔


あの時。
私は、一時の怒りに駆り立てられ、
お前に別れを告げた。
お前の事なんか考えもせずに、
お前に酷い言葉を投げ付けた。
そして、私はお前の元を去った。

…後悔している。
お前の想いも考えも、二人の歴史も、
自分の中のお前への想いさえ、蔑ろにして、
お前との繋がりの全てを断ち切った事を。

そして、今も尚。
後悔を抱えたまま、
お前に近付く事も、お前を見る事も、
お前の事を思い出す事さえ、
避け続けている。



あの日。
君は、私に激しい怒りをぶち撒け、
私に別れを告げた。
一方的に私を責める君に、
私は、何も言う事が出来なかった。
そして、君は私の元を去っていった。

…後悔してる。
未練がましいのは、格好悪いからと、
君を手放したくないと、縋る事もせずに、
私の元から去りゆく君を、黙って見送った事を。

そして、今でも。
後悔を抱えたまま、
君に声を掛ける事も、君に近付く事も、
君をそっと見つめる事さえ、
出来ずにいるんだ。

5/14/2024, 5:01:59 PM

風に身をまかせ


何だか、上手くいかなくって。
酷く息苦しくなって、
一人、街を飛び出した。

そのまま、高い丘に登って、
断崖絶壁の崖から、街を見下ろすと、
俺の住む街は、とても小さく見えた。
俺を苦しめてる日常って、
こんなにちっぽけなんだ、って。
そう思ったら、何だか涙が出てきた。

爽やかな風が吹き抜ける。
風が俺の服を、前髪を。
足元の草花さえ、分け隔てなく揺らす。

全て投げ出して、風に身をまかせ、
遠くに飛んでいってしまいたい。
そんな衝動に駆られて。
そのまま、足を踏み出そうとして、
…何とか踏み止まった。

きっと何時の日にか。
風が幸せを運んできてくれるから。

そう思ったら、何だか切なくて。
でも、もうちょっとだけ、
頑張ってみようって、思えた。


5/13/2024, 6:22:29 PM

失われた時間


生まれ育った国から逃げる為に、
私は『私』を殺しました。

今迄、生きてきて築き上げてきた、
キャリアも、人間関係も。
全て…無に帰しました。

何も持たず、身体一つで、
慣れぬ文化の他国で、
過去を忘れた振りをして、
姿を変え、職を変え、
生きていかねばなりません。

『私』が死んだ事で、
失われた時間は、
戻りは、しません。

ですが。
新しい『私』として、
胸を張って生きていけるのならば。
何時の日にか、きっと、
失われた時間以上に大切なものを、
手に出来るに違いない。
…そう信じています。

5/12/2024, 3:20:19 PM

子供のままで



季節は何度も巡り、
気が付けば、大人になり。
背負う物も、守るものも増え。

肉体は確かに大人になったけれど。
心の中には、まだまだ幼い所もあって。
でも。
毎日を必死に生きているうちに、
残酷にも、時間だけは流れてしまい。

大人になった『私』という、
器の中に居るのは、
大人のふりをする幼いままの『僕』。
だけど。私は。
必死に演じるのです。
…大人である、私を。

静かな夜。
緩やかな時が過ぎる、一日の終わり。
貴方と私のだけの時間。
私は、そっと貴方に語り掛けます。

お願いします。
せめて、貴方の前では、
子供のままで、居させて下さい。
…と。

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