霜月 朔(創作)

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風に身をまかせ


何だか、上手くいかなくって。
酷く息苦しくなって、
一人、街を飛び出した。

そのまま、高い丘に登って、
断崖絶壁の崖から、街を見下ろすと、
俺の住む街は、とても小さく見えた。
俺を苦しめてる日常って、
こんなにちっぽけなんだ、って。
そう思ったら、何だか涙が出てきた。

爽やかな風が吹き抜ける。
風が俺の服を、前髪を。
足元の草花さえ、分け隔てなく揺らす。

全て投げ出して、風に身をまかせ、
遠くに飛んでいってしまいたい。
そんな衝動に駆られて。
そのまま、足を踏み出そうとして、
…何とか踏み止まった。

きっと何時の日にか。
風が幸せを運んできてくれるから。

そう思ったら、何だか切なくて。
でも、もうちょっとだけ、
頑張ってみようって、思えた。


5/14/2024, 5:01:59 PM