霜月 朔(創作)

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5/11/2024, 5:56:43 PM

愛を叫ぶ。



もう、終わりにしましょう。
心配しなくても、大丈夫。
私が全てを、壊してあげます。

ああ、有難う。
最期まで、君に迷惑をかけて、
本当に申し訳ない。

貴方への御恩返しになるのならば、
貴方が救った、この私の手で、
貴方の全てを終わらせましょう。

私から流れ出る血は、
私の罪の証。苦しみの記録。
そして、君への謝罪の証、だ。

私も直ぐに、貴方の後を追いますから。
…では、最期に。
何か言いたい事は、ありますか?

ならば、断末魔の叫びの代わりに、
…愛を叫ぶ。
と、するかな。

5/10/2024, 1:42:52 PM

モンシロチョウ


俺の故郷の近くの街には、
亡くなった人の魂は、
蝶になって帰ってくる…って伝説がある。

春、最初に見た蝶が、白い蝶だと、
その人の家族に不幸があるとか。
蝶は死と再生のシンボルだとか。
麗らかな春に、咲き乱れる花々の間を、
ひらひらと舞う蝶の長閑さとは、
どうにも結びつかない、
暗い話や伝説を多く持つ蝶だが。
それでも、人を惹き付けずにはいられない、
不思議な存在でもある。

それでも。
少しだけ、穏やかな春の日に、
ひらひらと舞うモンシロチョウに目を留め、
僅かに微笑むお前を見て。

俺も道半ばで、戦場で斃れたら、
蝶になって戻ってくるから。
そん時は、邪険にしてくれるなよ、と。
真面目なお前にしては珍しく、
モンシロチョウの存在に、
仕事の手を休めるお前の背中を見て、
俺は、そっと呟いた。





5/9/2024, 4:48:12 PM

忘れられない、いつまでも。


折角のいい天気の休日なのに、
何だか、外に出掛ける気にはなれなくて。
最近嵌っている、紅茶でも淹れて、
偶には、ゆっくり読書でもしようかな。

そんな事を思って、何気なく手にとった本。
お気に入りの本だったけど、
もう長い間、開いてなかったな。
そう思って、パラパラとページを捲る。

本のページとページの間に、
一枚のメモが、挟まってた。
メモには、懐かしい彼の書いた文字。
それを見た途端、
私の胸はズキッと痛んだ。

私のお気に入りの本。
彼にも、貸した事があったな。
それは。
まだ、彼と私が恋人だった頃…。

彼はいつも私の隣で、
優しく微笑んでくれていた。
そんな、優しく、あたたかい記憶。
私が、どんなに戻りたいと願っても、
もう…戻れない、懐かしい日々。

彼は、二度と。
私を見てはくれないだろうけど。
だけど、彼への想いは、
忘れられない、いつまでも。

5/8/2024, 4:32:53 PM

一年後


来年もこの桜が見れたらいいな、とか、
来年のクリスマスは、
プレゼントに何が欲しい、とか、
お前は、何の何気なく、平然と言う。

だが、俺には。
『来年』なんて、気軽に言えはしない。

来年どころか、数日後には。
戦場で斃れ、物言わぬ骸となり、
地面に転がっているかもしれない。
絶望の余り精神を病んで、
地下牢に閉じ込められているかもしれない。
誰かに襲われ、大きな怪我を負って、
死の淵を彷徨っているかもしれない。
生きる為だからと、自己正当化し、
犯罪に手を染めているかもしれない。

未来に希望なんか、持てやしない。
一年後を想像すると、
何時でも、最悪の事態ばかり、
頭の中を埋め尽くす。

だが。
俺が、一番怖いのは。
一年後。
お前の隣に別の男が立っている事、だとは。
…心底情けない。

5/7/2024, 4:24:34 PM

初恋の日


お前の墓に花を手向けるのが、
いつの間にか、俺の日課になっていた。
 
お前の墓の前で、
俺は、お前に語り掛ける。
嬉しい事だけじゃない。
辛い事も、悲しい事も、
全てお前に、ぶち撒ける。

お前が居なければ、
俺はきっと、野垂れ死んで居ただろう。
お前が居たから、今の俺があるんだ。

いつもお前に手向ける花は、
決して華やかなものばかりじゃない。
それでも。
お前の誕生日、お前の命日、
そして、俺とお前が出逢った日は、
少しだけ華やかな花を手向ける。

俺がお前と出逢った日。
それは、
俺の…初恋の日、だから。

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