霜月 朔(創作)

Open App

一年後


来年もこの桜が見れたらいいな、とか、
来年のクリスマスは、
プレゼントに何が欲しい、とか、
お前は、何の何気なく、平然と言う。

だが、俺には。
『来年』なんて、気軽に言えはしない。

来年どころか、数日後には。
戦場で斃れ、物言わぬ骸となり、
地面に転がっているかもしれない。
絶望の余り精神を病んで、
地下牢に閉じ込められているかもしれない。
誰かに襲われ、大きな怪我を負って、
死の淵を彷徨っているかもしれない。
生きる為だからと、自己正当化し、
犯罪に手を染めているかもしれない。

未来に希望なんか、持てやしない。
一年後を想像すると、
何時でも、最悪の事態ばかり、
頭の中を埋め尽くす。

だが。
俺が、一番怖いのは。
一年後。
お前の隣に別の男が立っている事、だとは。
…心底情けない。

5/8/2024, 4:32:53 PM