在葉

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6/21/2023, 1:22:11 AM

あなたがいたから


 昨日、映画を観に行ったよ。普段の私なら観ないようなジャンルの映画。面白かったよ。あなたが勧めてくれたやつ。
 あなたとは趣味がちょっと違うんだけど、ねえ、だから、私1人で見つけることの、ほぼ2倍、楽しいことが見つかるんだよね。
 まあ、あなたとは性格も違うから、時々イラつくこともあるんだけど、幸い、お互い自由でありたいっていう気持ちが同じだったから、いい距離でいられてるよね。
 友達という言葉しか、当てはまるものはないんだけど、なんか違うよね。かといって、恋人になんかなれないし。
 こうやって一生一緒にいたいね。年に一回くらい、おすすめの映画とか本とか、不意に話してさ。

6/16/2023, 3:11:31 PM

1年前


 書くというのは、タイムカプセルを埋めるようなものでもある。
 なんでもない、取るに足らない、その時の自分にとっては当然のことを書いていても、1年後の自分にとって新鮮なこともある。
「学生の頃、憧れていた先輩のことやその時の気持ちとか」
「頑張れたあの時、なにを考えながらやっていたのか」
「友達と朝までカラオケ行って楽しかった時の気持ちとか」
「学校の先生のちょっとした一言が支えになったこととか」
 1年後の自分がこれを読んだ時に、「1年前の自分こそが自分を助けてくれる」と気がつけるかもしれないこととか。

6/13/2023, 3:46:24 AM

好き嫌い


 好き嫌いはよくないと教えられる。
 だから何も思わずに笑っていることにした。
 少し苦い青菜、通り道のアスファルトのひび割れ隆起したところ、休日朝の草刈機の大きな音、心に引っかかったまま蓋をした友達のことば。
 すべてを笑って許せるようになった頃、いろんなことがどうでもよくなった。
 休みの日、ベッドの上、天井に視線を投げっぱなしにしたまま…スマホが鳴った。通知が表示される。「暇でしょ? 部室来てよ。課題写すから持ってきて」

 は?

 むくむくと密かに育ってきたなにかが、心の蓋を突き破った。枕を引っ掴んで叫んで投げた。
「知るか自分でやれ!!! お前となんか仲良くねぇよ!!! どうでもいいわ!!!」

 勢いで着替えて、はじめてひとりでカラオケに行って回転寿司に行ってレイトショーで映画を観て、帰ってきた。
「どうでもよかったんだな…」
 課題写させるのは癪でしかないし、あの子のことは嫌い。部活やめよ。

 よく寝て目覚めた日、付き合いで入ってた部活はやめた。ぞんざいに扱ったらあの子は案外あっさり離れてった、その一点だけは好き。お互いどうでもよくなれてよかった。それぞれ別の場所で生きられる。

6/8/2023, 7:21:30 AM

世界の終わりに君と


「寿司食いたい。回る寿司」
 19日前に予告された世界の終わりは、次の0時頃だそうだ。友達、親友,ソウルフレンド、この世の言葉では表現し難い関係である人間に希望すれば、「まだ回ってんのかな?」と。
 はたして、回っていなかった。
「え、でも店開いてんね」
「仕事ラブの人とか結構まだ働いてるよね」
「お前も昨日出勤してたじゃん」
「まあね」
 何度か来たことのあるチェーン店の、店員ふたりが、ラッシャセー! と迎えてくれた。回ってはないが、使える素材手に入れられた素材で寿司を作っているという。
「寿司好きが作る寿司は格別だね」
「ほんとそれ」
 他愛のない話をしながら寿司を食い、金を払い、食った食ったと店をでて、ふと、思いつく。
「来世で会った時の合言葉は、最後に食べたネタにしよう」
「おっけ。でももしかしたら、魂が合わさって、1人として生まれるかもよ」
「その時はその時」
「うい。じゃ、また明日」
「おう。また明日」

6/6/2023, 10:07:39 AM

最悪


 小さいころ、大人が、何かあるたび、最悪、と言うのを聞きながら、「そんなに最悪でもないと思うけどなあ」と思っていた。最悪という言葉は、大したことない出来事をも、最悪のような気持ちにさせてしまう呪いの言葉だと感じていた。
 だから私は、そんなふうに言うようにはならないぞ、と思っていたのに。
 あれから20年以上が経って、仕事、日々、人間関係がびゅんびゅんと過ぎていく中、気が付けば、ふとした不快感に"最悪"と名付けている自分がいた。
 あぁ、さい…、……いや、いや。
 最も悪いわけではない。
 私は、こどもの頃の私の気持ちを覚えているのだから。

 どうしてそうなったのか考えよう。それが面倒ならもう、最悪という文字に、好きなルビをつけてしまおう。好きなおにぎりの具とか。
「はぁあ、ツナマヨーーー!」

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