猫とモカチーノ

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7/8/2024, 6:07:02 AM

短冊に書いた願い事は、叶うものだと思っていた。

「お金持ちになりたい」
「あのおもちゃが欲しい」
「〇〇くんと仲良くなれますように」

幼い私は、毎年、そんな子どもらしい願い事をしていた。

そんな願い事の中、小学校2年生に書いた願いは、今でも覚えている。

黒板に掲示された笹のイラストに、それぞれ短冊を貼る時間があった。

そんな、みんなの目につくところで、当時の私は

「パパとママが仲直りできますように」

と言う願いを、無邪気にも掲げたのだ。

ちょうど、数ヶ月前に両親が離婚した時だった。

幼い私には、離婚の意味がイマイチ分かっていなかった。
ただの喧嘩で、また仲直りすれば一緒にいられる。

そう思うようにしていた。

その短冊を黒板に持って行った時、先生が困った顔をしていたのを覚えている。

それに反して私はケロッとして、短冊が願いを叶えてくれるんだと信じて疑わなかった。

それから何年、何ヶ月経ってもお父さんとお母さんの仲は戻ることがなくて、私は、七夕なんて信じなくなった。


お題『七夕』

7/7/2024, 9:44:07 AM

もう顔も名前も思い出せないけど、10年前の夏休みに出会った、とある友だちとの思い出がある。

歳も知らないし、どこに住んでるかも知らない。
でもあの子は、毎週金曜日になると近所の公園に現れた。

他の曜日に行ってもいない、金曜日だけ。

「家は遠いけど、おばあちゃん家が近いんだ」

と言っていた気がする。

最初は確か僕から声をかけたんだ。
砂場の隅っこでせっせと山を作っている、見慣れないその子を遊びに誘った。

最初こそ戸惑っていたけど、僕たちはすぐに仲良しになって、金曜日が楽しみになっていた。

当時の僕らには連絡手段がなかったけれど、毎週金曜日、必ず公園に集合して遊ぶようになった。

でも一度だけ、その子が来ない日があった。

どうしたんだろうと思いながらも、家も連絡先も知らないからどうすることもできなかった。

その日はいつも帰る時間まで待ってみたけれど、結局その子は来なかった。

「もう会えないのかな」なんて子ども心に思っていたけれど、次の週の金曜日、友だちはいつも通り公園にいた。

僕の姿を見るなり友だちは深々と頭を下げて

「先週は来れなくてごめんね」

と言った。
話を聞くと、先週、友だちのおばあちゃんが亡くなったらしく、公園に来ることができなかったという。

「それでね、おばあちゃん家に来ることももうなくなっちゃうから。だから、今日でお別れなんだ」
「お別れ……」

突然告げられた別れ。

寂しいけれど幼い僕らにはどうすることもできなくて、その時の僕に出来たことといえば、一緒に遊べる最後の日を全力で楽しむことだけだった。

公園の遊具全てで遊び尽くして、お小遣いで買ったジュースで乾杯して、楽しかったのを覚えている。

でも、楽しい時間はあっという間で、夕方の音楽が流れ初めて、別れの時を知らされる。

「楽しかったよ。今までありがとう」

友だちは嬉しそうに笑っていた。

「……また、会えるといいね」
「うん!」

僕は涙を堪えながら、彼の姿が見えなくなるまで手を振り続けた。

その後も、その公園には通ってみたけれど、やはりあの子に会えることはなかった。

それでも、公園を横切るたび、友だち楽しかった記憶が蘇ってくるんだ。


お題『友だちの思い出』

7/6/2024, 9:22:33 AM

バイト終わり、家に帰って車から降りた時に眺める星空が好きだ。

空に広がる星々を見ていると、まるで世界に自分だけしか居ないように感じるだ。

特に冬は一段と綺麗で、1日の疲労が吹っ飛ぶくらい心が洗われる。

人に話してもあんまり分かってもらえないけど。

就職しても、歳をとっても、星空を眺めて心を落ち着かせる時間は大事にしたいなと思う。

お題『星空』

7/5/2024, 9:13:45 AM

「ねぇ、ここの神社有名なところなんだって〜!寄ってみようよ!」
「いいね!行ってみようー!」

友達3人組の小旅行。
行きたいところは大まかに決めてあったけれど、こんなふうにその場その場で気になるところに立ち寄っている。

私たちらしい、そんな旅路が好きだ。

「ここって何の神様なの?」
「うーん、お守りのラインナップ的に、学問とか安産とかかな?」
「曖昧じゃん!何お願いしよう」
「神様関係なしに、好きなことお願いすればいいんじゃない?」
「たしかに!」

「5円玉がいいんだよ〜」と友達が言うので、みんなで5円片手にお賽銭箱の前に立つ。

端の方に書いてある参拝の作法をチラッと見ながら、それらしくお願いごとをする。

(私のお願いごとは……)

「……よしっ!そろそろ行こっか!」

友達の1人がそう切り出したのを合図に、私たちは参拝を終えた。

「みんな何お願いしたの?」
「うーん、内緒!そういうあんたはどうなのさ」
「私も内緒!こういうのは言わない方が叶うって言うし」
「じゃあ何で聞いたの!?」

仲良しでもみんな、お互い何をお願いしたのかあまり検討がつかなかった。

私たちのお願いごとは、神様だけが知っている。


お題『神様だけが知っている』

7/4/2024, 7:29:32 AM

「わーっ!懐かしいなぁ」

大学生1年生夏休み。
私は、バイトで貯めたお金を使って、小学生の時に住んでいた故郷に訪れていた。

今住んでいる都市とは違い、故郷は所謂田舎っぽい町だったけれど、自然あふれるこの町が私は大好きだった。

ずっと遊びに行きたいと思っていたけれど、母は乗り気じゃなかったし、自分の足でもなかなか来れなかったから、やっとの思いでの里帰りだ。

「放課後はいつもここで集まってたなぁ」

訪れたのは小さな公園だった。
あの頃遊んでいたお気に入り遊具には、今では使用禁止の張り紙が貼られていて、なんだか寂しい気持ちになった。

小学生の時は、放課後はここに集まって、友達とゲームをしたりボール遊びをしたりして、毎日日が暮れるまで遊んでいた。

「あの頃は楽しかったなぁ、みんな、今頃どうしているだろう」

あの頃はまだスマホよりもDS主体だったので、結局、引っ越しを機に友達とは疎遠になってしまった。

「……そろそろ帰ろうかな。あっ、あの駄菓子屋さんまだやってるかな?帰りに寄っちゃお!」

あの駄菓子屋さんとは、公園の近くにあった駄菓子屋さんのこと。
年老いたおばあちゃんが1人で経営していて、遊びのお供に友達とよくお菓子を買いに行っていた。

たまにお菓子をおまけしてくる、優しいおばあちゃんだったのをよく覚えている。

「この道の先、たしか、あの角を曲がれば……!」

角を曲がれば懐かしい駄菓子屋さん

が、あるはずだった。

駄菓子屋さんのあった場所は、建物が取り壊されていて、更地になっていた。

「ここも変わっちゃったんだ……」

時の流れは残酷だ。

あの頃遊んだ遊具も、友達も、駄菓子屋さんも、私の記憶の中に確かにあるのにもう届かない。

またあの頃に戻れたらななんて、今でも思ってしまう私は、記憶に取り残されたままの子どもなんだろうか。


お題『この道の先に』

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