猫とモカチーノ

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もう顔も名前も思い出せないけど、10年前の夏休みに出会った、とある友だちとの思い出がある。

歳も知らないし、どこに住んでるかも知らない。
でもあの子は、毎週金曜日になると近所の公園に現れた。

他の曜日に行ってもいない、金曜日だけ。

「家は遠いけど、おばあちゃん家が近いんだ」

と言っていた気がする。

最初は確か僕から声をかけたんだ。
砂場の隅っこでせっせと山を作っている、見慣れないその子を遊びに誘った。

最初こそ戸惑っていたけど、僕たちはすぐに仲良しになって、金曜日が楽しみになっていた。

当時の僕らには連絡手段がなかったけれど、毎週金曜日、必ず公園に集合して遊ぶようになった。

でも一度だけ、その子が来ない日があった。

どうしたんだろうと思いながらも、家も連絡先も知らないからどうすることもできなかった。

その日はいつも帰る時間まで待ってみたけれど、結局その子は来なかった。

「もう会えないのかな」なんて子ども心に思っていたけれど、次の週の金曜日、友だちはいつも通り公園にいた。

僕の姿を見るなり友だちは深々と頭を下げて

「先週は来れなくてごめんね」

と言った。
話を聞くと、先週、友だちのおばあちゃんが亡くなったらしく、公園に来ることができなかったという。

「それでね、おばあちゃん家に来ることももうなくなっちゃうから。だから、今日でお別れなんだ」
「お別れ……」

突然告げられた別れ。

寂しいけれど幼い僕らにはどうすることもできなくて、その時の僕に出来たことといえば、一緒に遊べる最後の日を全力で楽しむことだけだった。

公園の遊具全てで遊び尽くして、お小遣いで買ったジュースで乾杯して、楽しかったのを覚えている。

でも、楽しい時間はあっという間で、夕方の音楽が流れ初めて、別れの時を知らされる。

「楽しかったよ。今までありがとう」

友だちは嬉しそうに笑っていた。

「……また、会えるといいね」
「うん!」

僕は涙を堪えながら、彼の姿が見えなくなるまで手を振り続けた。

その後も、その公園には通ってみたけれど、やはりあの子に会えることはなかった。

それでも、公園を横切るたび、友だち楽しかった記憶が蘇ってくるんだ。


お題『友だちの思い出』

7/7/2024, 9:44:07 AM