「わーっ!懐かしいなぁ」
大学生1年生夏休み。
私は、バイトで貯めたお金を使って、小学生の時に住んでいた故郷に訪れていた。
今住んでいる都市とは違い、故郷は所謂田舎っぽい町だったけれど、自然あふれるこの町が私は大好きだった。
ずっと遊びに行きたいと思っていたけれど、母は乗り気じゃなかったし、自分の足でもなかなか来れなかったから、やっとの思いでの里帰りだ。
「放課後はいつもここで集まってたなぁ」
訪れたのは小さな公園だった。
あの頃遊んでいたお気に入り遊具には、今では使用禁止の張り紙が貼られていて、なんだか寂しい気持ちになった。
小学生の時は、放課後はここに集まって、友達とゲームをしたりボール遊びをしたりして、毎日日が暮れるまで遊んでいた。
「あの頃は楽しかったなぁ、みんな、今頃どうしているだろう」
あの頃はまだスマホよりもDS主体だったので、結局、引っ越しを機に友達とは疎遠になってしまった。
「……そろそろ帰ろうかな。あっ、あの駄菓子屋さんまだやってるかな?帰りに寄っちゃお!」
あの駄菓子屋さんとは、公園の近くにあった駄菓子屋さんのこと。
年老いたおばあちゃんが1人で経営していて、遊びのお供に友達とよくお菓子を買いに行っていた。
たまにお菓子をおまけしてくる、優しいおばあちゃんだったのをよく覚えている。
「この道の先、たしか、あの角を曲がれば……!」
角を曲がれば懐かしい駄菓子屋さん
が、あるはずだった。
駄菓子屋さんのあった場所は、建物が取り壊されていて、更地になっていた。
「ここも変わっちゃったんだ……」
時の流れは残酷だ。
あの頃遊んだ遊具も、友達も、駄菓子屋さんも、私の記憶の中に確かにあるのにもう届かない。
またあの頃に戻れたらななんて、今でも思ってしまう私は、記憶に取り残されたままの子どもなんだろうか。
お題『この道の先に』
7/4/2024, 7:29:32 AM