幼馴染の千春。
子どもの頃は当たり前に毎日一緒に居たし、手を繋ぐのも当たり前。
なんならお風呂も一緒に入れられていた気がする。
小学生の頃だって、学校が終わるといつも公園に集合して遊んでいた。
お互い、思ったことはなんでも素直に言ってたし、気を遣わない関係。
誰がどう見ても仲良しで、このままずっと一緒にいるんだろうななんてことを思っていたのに。
「そういえば俺、彼女できたんだよね」
「えっ……」
大学生になって、遠くの大学に通うようになった千春と久々にランチをしていた時のことだった。
世間話をするようにしれっとそんなことを告げられて、言葉に詰まる。
「同じ大学の子でさ。思い切ってアタックしたらなんかうまく行っちゃって」
「へ、へぇ……。そうなんだ」
「なんだよー。兄妹が取れられみたいで、寂しくなっちゃった?」
「そんなわけないじゃん!いい彼女さんができてよかったね!!」
(兄妹、か……)
「私にしなよ」とか「私は兄妹みたいだと思ってなかった」とか、言いたいことはたくさんあるはずなのに言葉にならない。
子どもの頃は素直に言えたはずなのに。
最後まで言えなかった私は、彼女さんに気持ちを伝えられた千春と違って、まだ子どもなのだろうか。
お題『子どもの頃は』
僕の平穏でつまらない日常を変えたのはアイツだった。
「なぁ、お前もサボり?」
なんとなく気分が乗らなくて、初めて学校をサボってしまったその日。
サボるって何をするんだろうと、とりあえず商店街をぶらついていた時、声をかけてきたのはクラスの人気者だった。
「まぁ、そうだけど……」
「へー、珍しいな!俺も今日はなんか行く気になれなくてさ〜。せっかくだから、一緒にどっか行こうよ!」
「えっ」
あまり話したことないのにそんな提案をされて驚いてしまう。
キラキラしたアイツは、返事を待たずに「それじゃ行こう!」と俺の手を取って駆け出した。
それからゲームセンターに行ったり、コンビニで買い食いしたり、川で遊んだり。
最初は戸惑ったけど、サボってしまったことへの罪悪感が薄れるくらいには楽しかった。
それから、そいつとはよく話すようになった。
僕とは真逆の性格だったけれど、それが新鮮で、いい刺激になっていたのかもしれない。
僕のなんでもない日常を変えた存在。
お題『日常』
私の好きな色、燃えるような真っ赤な赤色。
「私、〇〇さんの髪すごく好きです」
ふわふわとした赤い髪の彼。
夕日の下というのもあって、よりその赤色が映えていて、心から綺麗だなと思った。
「赤色が好きってことですか?」
「もちろん色としても好きですけど、赤が好きだから好きなんじゃなくって、あなたの色だから赤を好きになったんです」
元々、私には特別好きな色がなかったけれど、彼と出会ってからは“赤色”が私にとって特別で、好きな色になった。
「……ありがとうございます」
赤い髪の彼は、その髪色に負けないくらい顔を真っ赤にしていた。
私の大好きな色。
お題『好きな色』
大好きな人だった。
絶望的な状況でも、逃げずに這い上がる姿を見て
「あぁ、この人みたいに生きることができたらな」
と想ったのがきっかけ。
周りの全員が自分に偏見を持っていても、負けずに努力し続ける姿。
どんな人にも優しく強くある姿。
やれやれと呆れながらも、やっぱりいつもまっすぐな目をしていて、そんな姿に憧れた。
住む世界は違ったけれど、間違いなく私の人生いちばんの大恋愛だった。
好きって直接伝えられなくても、一緒になれなくてもよかった。
あなたが存在してくれて、遠くから見ているだけで幸せだったのに。
突然告げられた別れ。ひどく一方的なものだった。
彼も、彼がいた世界も最初からなかったみたいに消えた。
彼が存在した証は手元にいくつも残っているけれど、彼はいない。
大好きだった彼は死んだ。
あなたがいたから頑張れていた。
こんな世界でも、あなたに会うためにずっとずっと我慢して、生きてきたのに。
もう、どうでもよくなっちゃった。
生まれ変わったら、同じ世界で生きられるかな。
次こそは、恋人同士になれるかな。
……途中で投げ出しちゃう、ダメな私には無理かな。
「ありがとう。大好き」
あなたがいたから幸せだったよ。
また来世で会えますように。
お題『あなたがいたから』
「うわっ、雨、降ってきましたね」
「本当だ。帰る頃には止むといいですね」
と口では言いつつ、
(神様仏様、お願いこのままずっと止ませないでください!!)
なんてことを心の中で願掛けしていた。
なんと言っても今日は最近気になる彼と2人きりの閉店作業!!
しかも今日は元々晴れ予報だったから、昼から出勤してる彼は傘なんて持ってないはず!
私はこんなこともあろうかと折り畳み傘を持ち歩いているので、帰りまで雨が降っていたらそれはもう相合傘のチャンス!!
お店の片付けをしながら、脳内で広がる妄想。
「傘ないんですか?私持ってるので、よかったら入ってってください!」
「ありがとうございます。助かりました」
(って感じになっちゃったりして〜!!きゃ〜〜〜!!)
そんな妄想ばかりしていたバチが当たったのだろうか。
あんなに降っていた雨は、帰る頃にはすっかり止んでしまっていて、私の作戦は失敗に終わった。
(まぁそうですよね、そんなうまくいくわけないですよね)
「雨、止んでよかったですね!」
と口では言ったけれど、全然良くない!!
これは当分引きずるだろう……。
お題『相合傘』