「隕石の衝突まで、残り1時間となりました。みなさん、悔いのないようお過ごしください」
今日は地球最後の日。
超大型の隕石が地球に衝突するというニュースが発表されてから、ありとあらゆる手が尽くされたが、結局なす術はなく、みんな最期の時間を楽しむことに尽力し出していた。
「一緒にいられるのも、あとちょっとだね」
「……そうだね」
私も、他の多くの人と同じように大切な人と最期の時間を過ごしていた。
出会った頃の話。懐かしい思い出の話。
……もう叶わないけど、これから二人でしたかったことの話。
彼が淹れたコーヒーと、私が作ったサンドイッチを食べながら、そんな他愛のない話をしていた。
「本当に全部終わっちゃうんだね」
楽しかったことも辛かったことも、全部終わってしまう。
悔いも後悔もたくさんあるけれど、地球が終わるこの瞬間、彼と一緒にいられることが嬉しい。
「楽しかったなぁ。あなたと出会えて、こんな時にも一緒にいられて本当によかった」
「僕も、君と世界の終わりを迎えられてよかった」
聞いたこともないような大きな音がして、もう終わりなんだなと改めて実感する。
「生まれ変わっても一緒にいようね」
そんな最後の約束をして、最後に二人で笑って。
世界の終わりに君といられてよかった。
お題『世界の終わりに君と』
「やばいやばい!遅刻しちゃう!!」
今日は最悪な日だ。
目覚ましをかけ忘れて寝坊するし。
トースターの調子が悪くて朝ごはんが食べれなかったし。
梅雨の湿気のせいで、いつもの巻き髪もできなかった。
散々な出来事に嫌になりつつも、なんとかダッシュで学校に向かっている。
「セーフ!」
始業のチャイムがなり終わる0.1秒前。
なんとか教室にたどり着く。
「なんだ、遅刻かー?」
と先生に茶化され、クラスメイトにも笑われ、本当に最悪だ。
「髪、括ってるの珍しいね」
ホームルームが終わった後、隣の席の合田くんがそう話しかけてきた。
実は密かに片想い中の男の子。
「あー、今日湿気やばくってさ、跳ねちゃうから結んだんだ。……変かな?」
「いや、すごく似合ってるよ」
「ほ、本当!?よかった〜!」
そんな一言で、朝の憂鬱すら吹っ飛んで、ハッピーになってしまう。
最悪な1日が、最高な1日になった瞬間だった。
お題『最悪』
私には、誰にも言えない秘密がある。
リボンやフリルの付いた服が好き。
長くてふわふわな髪が好き。
キラキラの小物が好き。
お花みたいな香りが好き。
可愛いスイーツが好き。
制服のズボンが嫌い。
短い髪が嫌だ。
キラキラした小物が欲しい。
お花みたいな香りが似合うようになりたい。
放課後はサイゼじゃなくてカフェに行きたい。
「”男の子らしさ”に囚われず、好きなものを好きでいたい」
家族にも友達にも言えない秘密。
この秘密を打ち明ける勇気があったなら、毎日がもっと楽しくなるのかな、
お題『誰にも言えない秘密』
「ここが、新しい僕の家……」
玄関を入ってすぐにある小さなキッチン。扉を開けると人一人が生活するにはちょっとだけ狭いリビング。
お風呂もトイレもとても狭い。
けれど、僕はこの部屋がとても気に入った。
「ここでなら、自由に生きて良いんだ……!」
実家は代々医者の家系で、そこそこ裕福ではあったけれど、その分、他人に決められた人生を歩んでいく生活だった。
それが耐えられなくて、実家から遠く離れた有名大学を選んだ。
新しい部屋は、実家と比べると住み心地はよくないかもしれない。
だけど、そんなの全然気にならないくらい胸は躍っていた。
料理、音楽、編み物、お菓子作り、朝までゲーム!!
ずっとやってみたかったことが、この部屋でなら叶えられる。
今の僕には、この狭い部屋がどんなお城よりも素晴らしく思えた。
お題『狭い部屋』
好きな人が死んだ。
性格には“殺された”というのが正しいのかもしれない。
私の好きな人は、遠い世界にいる人で、話すことも触れることもできない人。
カッコつけで自信家に見えて、それでも裏ではたくさん悩んで、まっすぐに生きている。
そんな彼が大好きだった。
側から見たら、現実見ろよって言われるかもしれないけど。
それでも、ずっとずっと大好きだった。
ある日、告げられた殺害予告。
「サービス終了のお知らせ」
頭を強く殴られたような、そんな衝撃が走った。
私の大好きな彼に、一生会えなくなってしまう。
片想いできるだけでも幸せだったのに、それすらもできなくなってしまう。
それかは時間が経つのが恐ろしく早くて、無情にもその日は来てしまった。
一方的に終わらせられた恋。
私は、これから何に縋って生きていけば良いのだろう。
……こんな気持ちになるなら、好きになんてならなければよかったのに。
お題『失恋』