とおぼえ

Open App
5/4/2025, 1:02:37 PM

すれ違う瞳

「……」
ファミレスで相席になったのが、まさか君だとは。
静かすぎる空間。
テーブルに並ぶ、口のついていない料理。
君の料理だけが減っていく。
焦る心。それとは反対に、なにも動かない口。
立ち去ろうとする君に声を掛けた。
「なに?」
久々に合った目線。気づいていた左手のそれ。
君の幸せに満ち足りた瞳には、俺はどう映ってる?
「…じゃあな」「バイバイ」
すれ違う瞳。二度と彼女と合うことはなかった。

4/27/2025, 12:42:34 PM

ふとした瞬間

いつもかわいい自慢の彼女。
あるとき不意に、
無邪気で愛おしい姿からは想像できない、
美しい女神のような人がそこにいる。
同じ笑顔なのに、こんなにも目が逸らせない。
スマホをポケットから出すこともできずに
ただただ見惚れる。
誰にも見せたくない。だけど、見せつけてやりたい。
俺の宝を。

4/8/2025, 12:47:29 PM

遠い約束

「わらわをどこかへ連れてゆけ」
いつかの日に交わした約束事。
気が強く、それでいて寂しがり屋なお嬢様。
彼女はいつも孤独だった。

星空が美しい深夜。
窓辺から外を眺めている彼女は、こちらを向かない。
「遅くなり、申し訳ありません」
そう言うと、彼女は言った。
「てっきり忘れていたのかと思っていた。よく来たな」
月明かりに照らされた女性はあの頃とは違う。
ただ、声でわかってしまうのに、
泣き顔を必死に隠そうとするのは、あのお嬢様だ。
「行きましょう。お嬢様」
「…ああ」

俺の毛並みに彼女の白い肌が重なる。
唯一俺を受け入れてくれたお嬢様のためなら、
俺は何だってする。





4/5/2025, 2:35:31 PM

好きだよ

俺には、恥ずかしくて言えないこの言葉。
彼女に言わせてばかりだ。
「言ってよ〜」
駄々っ子にさせてしまうこともある。
髪、声、笑顔、そして何より
ずっと側にいてくれるところ。
全てが愛おしくてたまらない。

「……す、きだ…」
俺の顔はどんな風になってた?
「遅いって…」
きっと君と同じくらい赤かったんだろうな。

3/20/2025, 12:54:52 PM

手を繋いで

手袋をしないでほしい。
それがたった一つの約束だった。

毎年冬になると、
君の手は氷のように冷たくなる。
たとえ冷たくても、手を繋いで温め合えばいい。
手を繋ぎたいという俺のエゴでもあった。
今年は
そんな手を握ることなく終わった。
暖かくなってきても、
俺の心は、君のことを繋ぎ止め、
君の体温を忘れることを知らない。

Next