遠い約束
「わらわをどこかへ連れてゆけ」
いつかの日に交わした約束事。
気が強く、それでいて寂しがり屋なお嬢様。
彼女はいつも孤独だった。
星空が美しい深夜。
窓辺から外を眺めている彼女は、こちらを向かない。
「遅くなり、申し訳ありません」
そう言うと、彼女は言った。
「てっきり忘れていたのかと思っていた。よく来たな」
月明かりに照らされた女性はあの頃とは違う。
ただ、声でわかってしまうのに、
泣き顔を必死に隠そうとするのは、あのお嬢様だ。
「行きましょう。お嬢様」
「…ああ」
俺の毛並みに彼女の白い肌が重なる。
唯一俺を受け入れてくれたお嬢様のためなら、
俺は何だってする。
4/8/2025, 12:47:29 PM