①
目の前の 高い高い壁に
割れた夢の 断片が散るので
それを拾つた 私の指先を切つた
行き過ぎた夢は 自分の未来を滅ぼす
小さく開いた傷口 滴つた血が壁を塗つて
透明だつた壁の先が まつたく見えなくなつた
泣きながら断片達を 指を切りながら集めても
細かく砕けた夢が 戻る兆しは見え無くて
私の後ろからは 格子戸が迫つて来る
こんな夢など 目指さなければ...
後悔しても 今更手遅れだ
あの頃の 輝きは無い
ーーー
赤く染つた高い壁に 赤く染まつた目が映つた
格子戸の向こうには 夢に笑つている私が居る
もう過去だよ
②
頬を伝つた一筋の宝石
泣く君はとても綺麗で
笑う君は、妖精の様で
まるで夢の住人だつた
...夢?
懐かしい思いが湧いた
何処かで見た様な場面
この瞬間を、夢で見た
何度目だろうかこれは
...またか
よく正夢を見るものだ
私は夢の中と同じ様に
指で君の宝石を掬つた
妖精は夢よりも輝いて
この時を夢で見たのでせう
この場面を私は望んでいた
懐かしさで涙が出そうです
題材【夢の断片】より
一歩踏み出そうとしたけれど
目の前の階段の余りの暗さに
私は口を閉ぢる
目を凝らして先を見ようとも
漂ふ空気の余りの不透明さに
私は目を閉ぢる
平衡感覚さへも失つた
光を捕えないこの目で
貴方は進めと言ふのか...
一歩間違えれば落ちる
この迷路の様な未来に
何を求めろと言ふのか...
もう止まつても良いですか?
題材【見えない未来へ】より
一陣の強い風が吹き抜け、私の髪を洗つた。
前から枯葉が飛んで来て、私の頬を切つた。
ーこの風は、何処から来たのか。ー
涼風を含んだ髪一房掬ひ、そつと口付ける。
徐に風上を向いて見つめ、遠地の彼を思ふ。
ーこの風は、何を乗せて来たか。ー
どうか笑わないで欲しい、考えてしまう事。
この風の空気や酸素窒素、更に粒子達まで。
ーこの風は、彼にも吹いたのか。ー
どうしても願つてしまう、彼と私の繋がり。
私に吹いたのと同じ風が、彼にも吹く事を。
ーこの風よ、ずつと吹いて行け。ー
降って来た紅葉の欠片に、沢山の想ひ込めて
私は吹き抜ける風に乗せて飛ばした。
題材【吹き抜ける風】より
僅かな記憶の欠片を 辿って歩いて行く
燻つた灯火を持つて 暗い森の中を行く
進む毎につくのは 昔の記憶の灯火達
燻つた火の欠片が 頭の中で広がつて
更に熱くなつて行く 記憶のランタンが
ますます明るくなる 記憶のランタンが
私の心を波打たせ 足を踏み出させる
私の頭を照らして 暗い森の中を導く
次の瞬間
体中を熱く明るい炎が駆け抜けた
ランタンはより燃え盛り火の玉に
冷えていた筈の頬が厚く火照って
私は白い息を吐いてしゃがみ込む
森の奥に切り取られた木々の隙間
その為にあるかのような狭い空間
私の目には沢山の光が映つていた
冬の明るく光る星、夜に光る星達
自然のプラネタリウム
題材【記憶のランタン】より
更けた夜の色に包まれて
暗くなつた海辺を
独り歩く女の上に
金色の光が差した
女は今宵本の主役となり
淡い羽衣を纏つて
舞い舞う舞い舞う
金色に光る月の下
数多の星が見惚れてゐる
海に金色の網渡り
夜の中光る貴方を
祝うように輝いて
何て美しい景色だろうか
目から溢れた涙は
伸ばした手と共に
暗い砂浜に落ちた
遠くで明るく光つてゐる
届かない遠くで...
題材【君を照らす月】より