木下の芝生に 寝っ転がる
風に吹かれて 寝っ転がる
春の朝の 穏やかなる惰性....
転がりながら仰ぎ見れば
何処までも何処までも、空は青色
風に吹かれて木が騒ぎ
風に吹かれて草が揺る
日陰に残る温もりに
頬を寄せて温まる
地面に溜まった温もりに
耳を澄ませて音を聞く
空の窓から差す光の
動きに合わせて 転がれば
何処までも何処までも、空は青色
題材【木漏れ日の跡】より
柔らかな細い糸が
あちこちを飛び交っている
「明日校門前ね」
「今度遊びに行こー」
また繋がった
色とりどりの糸が
未来を迂回して繋がっている
人と人の間に
私と貴方の間にも
細い糸が繋がっている
見えていないのでしょう
貴方は
よく光る太い糸だけを
見ているのでしょう
貴方は太い糸を掴んでいる
それしか無いかのように
太い糸だけじゃない
その細い糸が
私を一分先へ
その一分先へ
踏み出させているのだから
だから
本当は貴方の周りには
沢山あるのに
貴方の為に繋いだ
私とのささやかな
約束が
題材【ささやかな約束】より
①
暗闇に満ちた
世の中の
泥沼の中から
私は手を
精一杯伸ばす
ああ、苦しい
泥は重く
私を底に
引きずり込む
喉奥から心を込めて
激しい熱望を込めて
吐き出した空気は
大きな泡から
小さな泡となつて
黒の中に
消えて行つた
届いたのだろうか
この泥沼の上の
世界の更に上の
別の世界まで
その散つた泡に
私が含んだ物は
きちんと届いたのだろうか
泥沼を抜ける
その下の世界に落ちる
私は口を大きく開けて
猛毒の空気を
吸い込んだ
②
ふと
手を合わせた
視界を閉ぢた
瞼を上げると
手に絡まつた
赤い糸
指に結われた赤い糸が
どこか遠く続いてゐる
果てしなく続いてゐる
薄明の中に
真冬の冷えた空気の中
張り詰めて伸びてゐる
その糸は細く
私の鼓動を伝へてゐる
その糸は少し
私の体温を含んでゐる
手に絡まつた
赤い糸
前を向いた。
手を握りしめ
歩き出した。
糸の果てまで
自力で歩き辿り着け
そう私に言つていた
題材【祈りの果て】より
以前投稿できなかった【ティーカップ】も投稿致しました。ご興味があればどうぞ。
方位磁針が必要です
行き方を導く
方位磁針が必要です
往くべき道が
分かりません
分岐している道の中
どの方向へ進むのか
分かりません
懐中電灯が必要です
足元を照らす
懐中電灯が必要です
床が有るかが
分かりません
闇に包まれた道の中
どこに穴があるのか
分かりません
此処は私の中にある
心の迷路
迷路を作った私にも
謎まみれの迷路です
題材【心の迷路】より
水面に紅茶の葉を浮かべてみる。
私が机に顎を着いて、浮かんだ葉を観察していると、葉はティーカップの縁までふよふよと泳いで、止まった。
水面に、私の顔がうつる。...紅茶の湯気で眼鏡が曇っている。眼鏡を取ると、憂鬱な顔をした私が映っていた。髪の毛がボサボサだ。嫌になる。
「あ〜〜〜。」言葉にならない声を出す。ため息をついて、椅子から立ち上がった。
机の上に丸く散りばめられたティーカップには、それぞれ違う量の紅茶が入っている。色とりどりのそれが、沢山の音色を奏でた。
ティーカップに施された色、装飾。そして奏でる音までもが、カップに包まれた紅茶に溶け込み、独自の味を創っていた。
私はその中の、夜空の色に塗りつぶされたティーカップに目をやった。先程葉を浮かべたティーカップだ。中の紅茶は、先程の私の影がどう映っていたのかを思い出せない程に、カップの黒色で塗りつぶされていた。葉は、未だに黒い水面に反発するかのように、水面の端をぐるぐる回っている。
私は銀色のスプーンで葉を救出して、今度は金色に輝くティーカップに入れた。そしてスプーンを置き、机から離れる。ドアにかけられた鐘が、レトロな音を立てた。
金色のティーカップでは、窓から差し込んだ陽の光が反射して黄金に輝く水面の真ん中に、葉がバランスよく浮かんでいた。
題材【ティーカップ】より