星、夜に光る星

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暗闇に満ちた
世の中の
泥沼の中から
私は手を
精一杯伸ばす
ああ、苦しい
泥は重く
私を底に
引きずり込む

喉奥から心を込めて
激しい熱望を込めて
吐き出した空気は
大きな泡から
小さな泡となつて
黒の中に
消えて行つた

届いたのだろうか
この泥沼の上の
世界の更に上の
別の世界まで
その散つた泡に
私が含んだ物は
きちんと届いたのだろうか

泥沼を抜ける
その下の世界に落ちる
私は口を大きく開けて
猛毒の空気を
吸い込んだ


ふと
手を合わせた
視界を閉ぢた
瞼を上げると
手に絡まつた
赤い糸

指に結われた赤い糸が
どこか遠く続いてゐる
果てしなく続いてゐる
薄明の中に
真冬の冷えた空気の中
張り詰めて伸びてゐる

その糸は細く
私の鼓動を伝へてゐる
その糸は少し
私の体温を含んでゐる
手に絡まつた
赤い糸

前を向いた。
手を握りしめ
歩き出した。
糸の果てまで
自力で歩き辿り着け
そう私に言つていた



題材【祈りの果て】より

以前投稿できなかった【ティーカップ】も投稿致しました。ご興味があればどうぞ。

11/14/2025, 5:17:05 AM