①
暗闇に満ちた
世の中の
泥沼の中から
私は手を
精一杯伸ばす
ああ、苦しい
泥は重く
私を底に
引きずり込む
喉奥から心を込めて
激しい熱望を込めて
吐き出した空気は
大きな泡から
小さな泡となつて
黒の中に
消えて行つた
届いたのだろうか
この泥沼の上の
世界の更に上の
別の世界まで
その散つた泡に
私が含んだ物は
きちんと届いたのだろうか
泥沼を抜ける
その下の世界に落ちる
私は口を大きく開けて
猛毒の空気を
吸い込んだ
②
ふと
手を合わせた
視界を閉ぢた
瞼を上げると
手に絡まつた
赤い糸
指に結われた赤い糸が
どこか遠く続いてゐる
果てしなく続いてゐる
薄明の中に
真冬の冷えた空気の中
張り詰めて伸びてゐる
その糸は細く
私の鼓動を伝へてゐる
その糸は少し
私の体温を含んでゐる
手に絡まつた
赤い糸
前を向いた。
手を握りしめ
歩き出した。
糸の果てまで
自力で歩き辿り着け
そう私に言つていた
題材【祈りの果て】より
以前投稿できなかった【ティーカップ】も投稿致しました。ご興味があればどうぞ。
11/14/2025, 5:17:05 AM