ミキミヤ

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1/14/2025, 4:33:37 AM

私の父は、研究者だ。医学の分野を研究しているらしいんだけど、詳しくは知らない。最近は何やら長く続けてきた研究が佳境に入ったとかで、職場の研究所にずっと行っていて、たまに家に帰ってきたと思ったら、すぐに自分の書斎にこもる生活をしている。文字通り寝る間を惜しんで働いているみたいで、娘としては体調を崩さないか心配なのだけど、父は気にせず楽しげに働いている。絶対身体がつらいだろうに、楽しそうに精力的に働く姿は純粋にすごいと思う。

一度、父に、今している研究について訊いてみたことがある。「そんなに頑張ってやるようなものなのか」と。そうしたら、父は言った。「この研究がうまく行けば、世界が変わるんだ。今よりも多くの人が苦しまずに済むようにできるんだ。そう考えたら、頑張れちゃうんだよ」と。そう言った父の目は、少年のようにキラキラしていて、未来の姿が見えているような目だった。きっと、父には、研究の先の誰もまだ見ぬ景色が見えているんだと思った。

父を見ていたら、私も、その景色が見たくなった。
だから、精いっぱいの思いを込めて「頑張ってね」って私は伝えた。私には、父の研究を手伝うことはできない。だから、こうして声をかけることくらいしかできない。この声が少しでも父の力になっていたらいいなと思った。
父は「もちろんだ!」って力強く頷いて、また仕事へ戻っていった。その背中に、早く父の見ている景色が現実のものになりますように、と強く祈った。

1/13/2025, 7:19:37 AM

子どもの頃、つらいとき、必ず見る夢があった。夢の中には優しい王さまがいて、ぬいぐるみの仲間たちと、ふわふわの優しいパステルな世界で、一緒におしゃべりをしたり、あまいお菓子を作ったり、お城の中を探検したりして過ごした。
僕は繰り返し何度もその夢を見た。夢の世界は続いていて、夢の中の王さまも仲間たちも、前に会ったときのことを覚えていた。
つらい現実も、夢の中で彼らと過ごせば忘れられた。僕はいつしか、つらいときは眠って夢の世界に逃げるようになった。あの頃、眠りは僕の救いだった。

大人になって、あの夢は見なくなった。それでもあの夢の世界は、あの頃僕を生かしてくれたものなのには変わりないし、今でも僕の一部として生きていると思う。
だから、僕は今、絵本を描いている。あの夢のつづきを紡いで、この世に産み出している。あの頃の僕のようなつらい現実を生きる誰かに、優しい夢を届けたくて。

1/12/2025, 7:55:32 AM

「パパ!!!おかえりー!!!!」

大きな声で言いながら、膝の辺りにぎゅっと抱きついてくる愛娘。
仕事で疲れて、寒い夜の中を歩いて帰宅した俺に、娘の体温がじんわり沁みる。

「おかえりなさい、あなた」

キッチンから顔だけ出して、妻も声をかけてくれる。辺りには、シチューの美味しそうな匂いがしている。

「ただいま」

娘を抱き上げながら、玄関を上がる。
娘は俺の手を触って、

「パパ、おててつめたいね。マナがあっためてあげる!」

と言って、俺の手を小さな手で一生懸命に擦ってくれた。

「ふふ、あたたかいね。ありがとう」

廊下を歩きながら、俺は笑って娘のほっぺにキスをした。娘は嬉しそうに笑った。

ああ、あたたかいな、幸せだな、と俺は思った。

1/11/2025, 5:37:25 AM

人生の選択っていうのは、目の前にある無数にある扉から1つを選び取って開けていくことだと、僕は思う。扉の先に進んだら、後戻りはできず、他の扉の先にある風景を知ることはできない。


「いやー、やっぱりあの監督の映画は面白いねー!」

楽しげに君が笑う。僕も同意して、同じように笑う。

幼馴染の君と2人で映画を観て、お茶をしながらこうして感想を言い合うのは何度目のことだろう。もう数えることができないほど重ねてきた。それが、いつからか、僕にとって特別なものになっていた。気づいたら、君が好きだったから。
君は、この時間をどう思っているのだろうか。他の友達と過ごすのと変わらない?それとも、何か特別なものを感じてくれてる?
知るのが怖くて、この関係をずっと変えられずにいる。このままでも充分とも思うけれど、本当は変えたい。君の友達じゃなくて、恋人になりたい。

僕の目の前にはずっと、かたく閉ざされた扉がある。本当は鍵を持っているのに、開けずにいる扉。
君に僕の想いを告げれば、扉は開いて、今とは違う景色が広がっているはずだ。でも、その景色が今より良いものかわからないから、僕はずっと尻込みしてきた。


「あのさ、」

帰り道、2人の間に流れる心地良い沈黙を破って、僕は口を開いた。今こそ、君に告げるんだ。そう決意して。


これから告げる言葉は、きっと未来への鍵。その未来が僕の望んだものでありますようにと、僕は強く願った。

1/10/2025, 8:48:36 AM

君は星だ
君の歌声は力強くて優しい
暗い夜空の中でキラキラと瞬く光だ
苦しい時に僕に戦う力をくれる

君の歌声を聴けば僕の胸にも光が灯る
それは君がくれた星のかけら
僕はその光を胸に今日も生きている

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