ミキミヤ

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子どもの頃、つらいとき、必ず見る夢があった。夢の中には優しい王さまがいて、ぬいぐるみの仲間たちと、ふわふわの優しいパステルな世界で、一緒におしゃべりをしたり、あまいお菓子を作ったり、お城の中を探検したりして過ごした。
僕は繰り返し何度もその夢を見た。夢の世界は続いていて、夢の中の王さまも仲間たちも、前に会ったときのことを覚えていた。
つらい現実も、夢の中で彼らと過ごせば忘れられた。僕はいつしか、つらいときは眠って夢の世界に逃げるようになった。あの頃、眠りは僕の救いだった。

大人になって、あの夢は見なくなった。それでもあの夢の世界は、あの頃僕を生かしてくれたものなのには変わりないし、今でも僕の一部として生きていると思う。
だから、僕は今、絵本を描いている。あの夢のつづきを紡いで、この世に産み出している。あの頃の僕のようなつらい現実を生きる誰かに、優しい夢を届けたくて。

1/13/2025, 7:19:37 AM