『夜景』
「夜景」と聞いたとき、皆は何を思い浮かべる?
…俺は、美人な彼女と一緒に高級ディナーでも食べながら上から眺める都会の夜景かな。
ま、俺金無いし彼女もいないんだけど。
別に、さっきの夜景が理想ってわけじゃない。
そりゃ、憧れないことはないけどさ。
一人でビールとか飲みながら、安いアパートの窓から殺風景な都会を眺めるのもなかなか良いもんだと思うよ。
だから何って言われても…。
ただ、そう思った。
それだけだよ。
『言葉なんていらない、ただ』
「偉い」「すごい」「天才」「優等生」「さすが」
テストの点数を取ったり、スポーツでみんなの役に立てば皆こんな言葉を並べる。だから、認めてほしくて、褒めてほしくて今日も頑張る。運動なんて大嫌いだし、勉強よりもゲームがしたい。でも、頑張らないと。もっともっと、今よりずっと良くなるように。じゃないと、「僕」を見てくれない。僕を見て。僕を褒めて。僕を認めて。
…本当は、褒め言葉や称賛なんて薄っぺらい言葉はいらない。そんな言葉よりも、抱きしめて欲しかった。撫でてほしかった。甘やかしてほしかった。
―ただ、愛して欲しかった
『香水』
今日は…これ。
大人な雰囲気のほろ苦くいコーヒーの香り。
ちょっぴり甘くて癖になるこの香りが最近のお気に入り。
「今日は、この前言ってたカフェに行ってみようか。」
また別の日は、弾けるようなフルーツの香り。
甘酸っぱくて、元気になれるの。
「さて!じゃあどこ行く?」
…ふふふ。まるで香水のように私の人生をより素敵にしてくれる。"恋愛"って素晴らしいのね。
『裏返し』
誰かが言った。
「いやよいやよも好きのうちで、嫌いは好きの裏返し。好きの反対は無関心。」と。
僕はそうは思わない。
「嫌い」が「好き」の一種だなんて、認めたくない。
僕があの子に抱くこの嫌悪感は、「好き」なんかじゃないはず…
だって、好きな人がそばにいるときは近寄ると近づきたくなって、無関心な人が近くによっても何もしなくて、嫌いな人が寄ってきたら避けるだろう?
「好き」で近寄るなら、離れた「嫌い」が反対だと思わないかい?
とにかく、僕はあの子が嫌いなんだ!
絶対にす、好きじゃない!!
『いつまでも捨てられないもの』
「ただの友達。」
そう聞いたときから、諦めていたはずだった。
ただの幼馴染なのに、もしかしたらって期待してしまう自分も、それを利用して一番になろうとする自分も嫌だったのに。
あなたの顔を見るたび、声を聞くたび、どんどん好きになっていく。
見慣れた姿もよく知った性格も、全てが愛おしい。
―あぁ、好きだなぁ。
言うつもりはないけどね。
この気持ちは、いつまでも捨てられずにいる。
『最初から決まってた』
20XX年X月XX日、飼っていた犬が○んだ。
あいつは人懐っこくて皆に可愛がられていた。
僕が小さい頃から一緒にいて、
一緒にたくさん遊んだ。
悲しい時は慰めてくれた。
「ただいま」と言えば「おかえり」と言うように飛びついてきた。
うるさいくらいに元気に吠えながら、いつも僕のそばにいてくれた。
最初からわかっていた。生き物はいつか○ぬ。
そう決まっている。かなりの老齢だと言われていたから、ちゃんと覚悟もしていた。
なのに、いざその時が来るとそれを認められずにいる。
「何であいつが」「認めない」「今じゃなくていいだろ」
…何で、今なんだよ。
今日じゃなくても、明日とか明後日とかでもいいじゃん…
楽しかった思い出、嬉しい気持ち。あいつが残していった
モノ一つ一つが、僕の心を締め付ける。
「何で…っ」
涙で視界が滲む。
「ワンッ」
あいつの声が聞こえたような気がした。
懐かしい、僕が落ち込んでいるのを慰めてくれているときの声色だった。
何だよ、悲しむなってか?
誰のせいでこんな…
あいつの今までの姿が浮かぶ。
「良いよ、やってやるよ。」
自然と笑顔になった。
僕はあいつの写真に向かって宣言した。
「僕がお前の分まで生きてやる!!いつかその時が来ることが決まっていてもそれまで精一杯頑張ってやる!!楽しい思い出とか土産話たくさん作ってやるから待ってろ!!!」
最後の方はあほぼ叫ぶ形のになってしまった。
あいつの満足そうな顔が頭に浮かぶ。
「ハハッまだまだこれからなんだから、こんなんで満足してんじゃねえよ。」
最後の涙が頬を伝った後、僕は未来に向かって歩き出した。