絢辻 夕陽

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6/27/2024, 12:08:34 PM

ここは何処だろう

私は気がついたら静かな闇の中を漂っていた。
何も音がしない。何も聞こえない。
そこにあるのはただただ静かな闇。

私はどうしてこうなったんだろう。

確か彼に会いにいつもの喫茶店に向かっていてそれで交差点を渡ろうとして。

思い出せない。その先がどうしても思い出せない。

どれ位の時間この闇の中を漂っていたのだろうか。
私は不安に押しつぶされそうになりながらも必死に何かを思い出そうとした。

そんな時、ふと思い出したのは彼と初めて会った時の事だった。

彼は初めてあったのにも関わらず親切に私に席を譲ってくれた。
あんな人は初めてだった。
私は彼に会うたびに少しずつ彼に惹かれていった事に今になって気がついた。

「彼に会いたい。」

私は口に出していないにも関わらずその言葉はこの空間に響き渡り思わず口を塞いでしまった。

彼に会いたい 独りぼっちはもう嫌だ

彼に対する想いが私の中から溢れ出てきた。

「彼にまた会いたい。もう一度だけでいいから、彼に会いたいの!」

視界は急に開け周りは急速に白に染まった。
目をそっと開いた。周りは白一面で視界を横に向けるとそこには窓から柔らかな光が注いでいた。

私、生きてた。
早く、早く彼に会いたい。

そんな事を考えていたらそばに居た看護師らしき人が医者を呼びに行った。

看護士から呼ばれて来たのは医者とその横にいたのは、彼だった。

私は彼を見た瞬間、目から涙が溢れ出た。
彼もずっと一人で耐えて待ち続けていてくれていたのか、涙を流し喜んでくれた。

数ヶ月後

「おはよう。もう、いっつも遅いんだから。」
「ごめんごめん。急いで来たつもりなんだけどなぁ。」

あれから私達は相変わらずいつもの喫茶店で談笑している。
彼も転勤先が思ってたよりも近くだったのか毎週会いに来てくれる。

「ここのモーニングコーヒーほんと美味しいね。」
「本当ここのコーヒーほど美味しい所はあまり無いかもね。」

こうしてまた一緒に珈琲を飲める。
また一緒に話せる。幸せだ。

毎週会えるのは休日だけとはいえ私にとって些細ながらもそれだけで十分幸せだ。

「あっ、私のお菓子食べないでよ」
「いいじゃないか、元気になったんだからさ。」

今日も一段と騒がしいが、モーニングコーヒーは普段よりもほろ苦く、香ばしく感じた。

「モーニングコーヒー」

6/26/2024, 1:47:20 PM

「ついて来るって本当?」

私はその言葉が信じられなかった。
思わずコーヒーカップを落としかけた。

本当は私から別れを告げようかと思っていたばかりに思わぬ返答で困惑した。

「だってね、こんなに人から優しくされたの初めてだったんだもの。」

彼女はそう言って珈琲をぐいっと飲んだ。
意外と豪快である。

「貴方みたいな人だったら何処まで一緒に行っても
多分面白いかなって。」

成程。からかっただけなのか。

「そうかな。もし仮について行く先が遠い火星とかだったらどうする?」

「その時もこの珈琲とお菓子を両手に持って一緒について行くわ。」

本気か。本気なのかこの子は。
そろそろいい加減に本当のことを彼女に話そうと思った。

「実はね、もうすぐ転勤でここを離れなくちゃいけなくなるんだ。」

言った。ついに言ってしまった。

彼女の方に顔を向けると困った様な顔をしていた。
まるでもっと悪戯したかったのにと言わんばかりである。

「そっか、それは残念ね。せっかく会えたのに。」

「だったらさこれからも時々ここで待ち合わせして
また、珈琲とお菓子を楽しもうじゃないか。なかなか会えなくなるかもしれないけどさ。」

「うーん」

彼女は相当悩んでいる。
これはもしかしたら先ほどの発言が本気だったのかもしれない。

「たまに、か。たまにじゃなくて毎月じゃ駄目?」

「えっ?」

本気だったのか、さっきの言葉は。
思わずごくりと喉元を鳴らしてしまった。

「わかったよ、そんなに会いたければ毎月だろうが毎週だろうが構わないさ。」

私はそう言って彼女の言葉に承諾した。

数日後、いつもの喫茶店で待ち合わせをしていた。

おかしい、いつもなら彼女の方が先に来ているはずなのに今日は来ていなかった。

何かあったのだろうか。

喫茶店の前の交差点で救急車の音がした。
何があったんだろうか。

私は嫌な予感がした。
そしてそれはどうやら的中したらしい。
彼女だった。
彼女が救急車に運ばれるところを見てしまった。
私はその救急車を追い彼女の運ばれた病院まで行った。
テレビでは先ほどの事故のニュースが流れていた。
彼女は全身を強く打ち付けたらしく重体だった。

私はそっと顔を下に向け涙がこぼれ落ちるのを必死で耐えた。
神様、どうか彼女を助けてください。

彼女との思い出はあれ以来ずっと心の奥に秘めている。
彼女は今も昏睡状態で眠ったままだ。
あの時の笑顔はもう見れないのだろうか。
彼女には会える。
それだけで十分と考えるべきなのか。
もう一度だけ、もう一度だけでいい。
彼女とまたあの喫茶店で一緒に珈琲を飲んで語りたい。
私はいつまでも目が醒めるまで貴女を待っているから。

「コーヒーブレイクの後で」

6/25/2024, 12:51:02 PM

その華はガラスで出来た様な華だった

まるで繊細な心を持つかのように

少しでも触れれば直ぐにでも粉々に崩れ去りそうな

脆さを抱えた美しい華だった

その華は誰の心にも存在する

云わば心の華である

人の心程繊細かつ美しい華はそう無いだろう

繊細な心と云う華は少しだけでも触れただけで

粉々に砕け散ってしまう

それ程繊細な物だ

「心と云う繊細な華」

6/24/2024, 11:23:11 AM

一年後、私達はもういないのかもしれません

だけどそれでも私達にとって希望はあります

それは私達が遺した子ども達という存在です

私達の子ども達はきっと大きくなれば人の為にと、
役に立つ子達になるでしょう

一年後、もし私達がまだ生きていたならば

きっとその子達は勇気を持って前へと進むでしょう

私達という壁を乗り越えてきっと成長するのでしょう

子ども達よ、あなた達には皆希望がありそして未来があります

将来思わぬ事も起きるでしょう

しかしきっとあなた達ならばそれらを乗り越えて成長する事ができるでしょう

どんな事が起きても慌てず騒がずじっくりとよく見て状況を把握し事を収める事ができるでしょう

あなた達は私達にとって未来への希望の光です

どうか私達の事を忘れたとしても周りの人達を大切にし調和を保つ様に毎日を平穏無事に過ごして下さい

どうか将来の子ども達よ、お幸せに

「将来の子ども達へ」

6/23/2024, 12:04:24 PM

幼かった頃は

ただただ真っ直ぐに突っ走っていた

その行き先がどんなに曲がりくねった角だろうが

泥道だろうがとにもかくにも突っ走っていた

突っ走る事しか思いつかなかった

今を思えばその時の無謀さはある意味羨ましくもある

今は恐る恐る進むしかない

そんな社会だ

だけどたまには昔を思い出して
真っ直ぐに進みたいと思う時がある

真っ直ぐな志はきっとその轍が誰かの道となり、
大きな一歩となるのだから

「道」

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