きっと明日は晴れるはず。
大丈夫だよ。
そう言って姉は眠りについた。
姉の言葉を信じた。
信じていたかった。
ある日地球の水は枯れ果てた。
馬鹿な人間が使いすぎたから。
世界は砂漠と化し、すべての生き物が自分の死を悟った。
そんな時科学者がある発明をした。
砂を原子分解して、雨雲を作る装置。
みんなで協力して使えば世界を救える大発明。
なのにね。
馬鹿な人間はそれを独り占めし、怒った他の人間は装置を壊した。
壊れた機械は、世界を水没させる兵器となった。
その日から、雨が止むのを見たものは、一人もいないのだと言う。
恐ろしい兵器は徐々に故障し、死んでいった。
あと二人だけ。
そう。
私と姉は、あの恐ろしい兵器だ。
姉は、明日は晴れると嘘をついて眠った。
もう目覚めることはない。
私の涙は、もう雨か涙かわからない。
私はこの世界の全てを砂と認識した。
温もりも感じない機械である姉を抱きながら、私のたつ地面は、私に吸い込まれ、雨となり、
埋もれていった。
はあ?
お前みたいなやつ好きになるわけないじゃん。
早く消えろ。
これが私の初恋の終わり方。
ずっと好きにさせるために頑張ってきた。
そんなのも無駄なんだって思うと苦しい。
苦しいよ。
君が好きだから毎日を生きてきた。
君が私をいらないと言うなら
私は明日目覚める理由などない。
依存と呼べるほどに好きなひと
あなたは私がいらないんだね。
あなたは私の告白など見向きもせず
この屋上から立ち去ろうとしている。
そんなの嫌。
別れ際の最後の一押しのように、彼の手を捕まえる。
彼は私の手を振り払おうとする。
離さない。
怒りと悲しみと無気力な気持ちが混ざって、もうどうでもいい。
気持ち悪いほど満面の笑みを浮かべる。
屋上の端へと彼を引っ張る私を見つめる彼の顔は、みたことのないほど引き攣っている。
「お前どこからこんな力が」
彼は叫ぶ。
まあそうだよね。
私はヴァンパイア。
恋に飢えた私を傷つけたあなたは、もう私と離れられないね。
ずーっと一緒だよ。
真っ白な腕で彼を抱きしめながら私は屋上の端を蹴り
共に宙に舞った
ジャングルジムに座る女の子が一人。
その子は歌を歌っている。
その歌を聞いてはダメよ。
人間で居たいなら–---
こんな言い伝えが、私の村にはある。
私はこの村に住む住民の一人。
私には特別な能力がある。
私は人間以外の話す言語がわかるのだ。
そのことは村の人には言っていない。
でも村の人たちは、親もいないのに森の中で一日中楽しく歌う私が、嫌いみたい。
いつも私が来ると意地悪するし、今度の儀式?では私を生贄にするらしい。
その時、この噂を聞いた。
その歌を聞きたいと思った。
女の子も私と同じだと思った。
村の人に嫌われている私でも、その子になら嫌われない気がした。
その歌は何を言っているか分からないらしいけど、そんなの気にしないと願った。
村は夜の闇に包まれた。
今なら動いても大丈夫。
私はジャングルジムに向かった。
歌が聞こえる。
何を言っているのかもはっきりと。
つまり。
あの子は人間じゃないと言うこと。
恐る恐る話しかける。
村の人なんて嫌い。
私を人間じゃなくして。
そう言うと女の子は満面の笑みで笑う。
いいよ。
この歌が聞こえるなら、
あなたは私の友達。
やっと一人じゃなくなったね。
お互いに。
その子は泣いていた。
その子の着ているものは、生贄にされる時に着る、白い着物だった。
死んでからずっと一人だったんだね。
これからは二人一緒だよ。
そう言う私も泣いていた。
女の子は歌を歌い出す。
その歌を聞きながら私は思い出した。
昨日私が生贄となって死んだことに。
でも
もう一人じゃないならどうでもいいと願い目を瞑った。
生贄の女の子二人は、人ではなく、二人の白いカラスとなって、天へと飛び立った。
この世界は音で溢れている。
そんな常識誰でも知っている。
そんな常識がある日、覆った。
私はある日、倒れてしまった。
原因は分からない。
急に視界が真っ白になって、気づいたら白い部屋にいた。
ただそれだけ。
なはずだったのに。
その日から私の世界は、止まってしまった。
音のない世界に私だけ取り残された。
そんな気がしてたまらない。
最近では、だんだん頭も真っ白になっていくように、記憶さえも音と一緒に消えていく始末だ。
なんで私だけ。
置いてかないでよ。
泣きそうになる私の部屋に、一筋の風が吹き抜けた。
カレがきたんだ。
そう気づいた。
やあ。
笑いながらカレはそう呟く。
カレをみて、溢れそうな涙が溢れる。
カレは小さな手で撫でてくれる。
大好きなカレ。
カレの声が聞けたらいいのに、。
ある日私は手術をすることになった。
失った聴覚の部分を提供してくれる人が見つかったらしい。
しかも両耳だ。
カレにそのことを話すと、笑って喜んでくれた。
でも
その顔が少し憂いた顔に見えたのは、気のせいだろうか。
手術が終わった。
世界に色がつき、音が戻っていく感覚に安堵しながら、彼の所に向かった。
カレの病室に行く。
ドアを開ける。
カレは居なかった。
困惑しながら、カレのベットを見ると、小さな手紙が置いてあった。
手紙を開ける。
ごめんね栞菜ちゃん
ずっと君と一緒に居たかった
僕は病気だったんだ
君の聴覚を提供したのは僕なんだ
音で溢れる世界で、笑って生きてね
悠人より
涙が溢れた
カレには会えない。
そんな絶望が押し寄せた。
でも
カレは笑って生きてと願っている。
なら私は笑って生きよう。
そう誓って窓の外に耳を澄ました私に、カレの拙い歌声が
聞こえた気がした
煌めく星空
あの中の一つにきっといる
会いたいな
君に