この世界は音で溢れている。
そんな常識誰でも知っている。
そんな常識がある日、覆った。
私はある日、倒れてしまった。
原因は分からない。
急に視界が真っ白になって、気づいたら白い部屋にいた。
ただそれだけ。
なはずだったのに。
その日から私の世界は、止まってしまった。
音のない世界に私だけ取り残された。
そんな気がしてたまらない。
最近では、だんだん頭も真っ白になっていくように、記憶さえも音と一緒に消えていく始末だ。
なんで私だけ。
置いてかないでよ。
泣きそうになる私の部屋に、一筋の風が吹き抜けた。
カレがきたんだ。
そう気づいた。
やあ。
笑いながらカレはそう呟く。
カレをみて、溢れそうな涙が溢れる。
カレは小さな手で撫でてくれる。
大好きなカレ。
カレの声が聞けたらいいのに、。
ある日私は手術をすることになった。
失った聴覚の部分を提供してくれる人が見つかったらしい。
しかも両耳だ。
カレにそのことを話すと、笑って喜んでくれた。
でも
その顔が少し憂いた顔に見えたのは、気のせいだろうか。
手術が終わった。
世界に色がつき、音が戻っていく感覚に安堵しながら、彼の所に向かった。
カレの病室に行く。
ドアを開ける。
カレは居なかった。
困惑しながら、カレのベットを見ると、小さな手紙が置いてあった。
手紙を開ける。
ごめんね栞菜ちゃん
ずっと君と一緒に居たかった
僕は病気だったんだ
君の聴覚を提供したのは僕なんだ
音で溢れる世界で、笑って生きてね
悠人より
涙が溢れた
カレには会えない。
そんな絶望が押し寄せた。
でも
カレは笑って生きてと願っている。
なら私は笑って生きよう。
そう誓って窓の外に耳を澄ました私に、カレの拙い歌声が
聞こえた気がした
9/23/2024, 9:53:06 PM