桜井呪理

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ジャングルジムに座る女の子が一人。

その子は歌を歌っている。

その歌を聞いてはダメよ。

人間で居たいなら–---



こんな言い伝えが、私の村にはある。

私はこの村に住む住民の一人。

私には特別な能力がある。

私は人間以外の話す言語がわかるのだ。

そのことは村の人には言っていない。

でも村の人たちは、親もいないのに森の中で一日中楽しく歌う私が、嫌いみたい。

いつも私が来ると意地悪するし、今度の儀式?では私を生贄にするらしい。

その時、この噂を聞いた。

その歌を聞きたいと思った。

女の子も私と同じだと思った。

村の人に嫌われている私でも、その子になら嫌われない気がした。

その歌は何を言っているか分からないらしいけど、そんなの気にしないと願った。



村は夜の闇に包まれた。

今なら動いても大丈夫。

私はジャングルジムに向かった。

歌が聞こえる。

何を言っているのかもはっきりと。

つまり。

あの子は人間じゃないと言うこと。

恐る恐る話しかける。

村の人なんて嫌い。

私を人間じゃなくして。

そう言うと女の子は満面の笑みで笑う。

いいよ。

この歌が聞こえるなら、

あなたは私の友達。

やっと一人じゃなくなったね。

お互いに。

その子は泣いていた。

その子の着ているものは、生贄にされる時に着る、白い着物だった。

死んでからずっと一人だったんだね。
これからは二人一緒だよ。

そう言う私も泣いていた。

女の子は歌を歌い出す。

その歌を聞きながら私は思い出した。

昨日私が生贄となって死んだことに。

でも

もう一人じゃないならどうでもいいと願い目を瞑った。







生贄の女の子二人は、人ではなく、二人の白いカラスとなって、天へと飛び立った。





9/24/2024, 8:44:16 AM