箱庭メリィ

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9/27/2025, 3:21:53 PM

「わっ!どうして泣いてるの!?」

部屋に帰ってきた時、彼女が口元に手を当てて泣いていた。
両の目から涙がポロポロとこぼれている。

僕の声に驚いたようにこちらを向いた彼女は、はっとして両手を外した。

「え?」

ぺろっと舌を出して、彼女が言う。

「泣いてないよ。あくびしてただけ」

それを聞いて僕は心配が安堵に変わり、玄関にへたり込んでしまった。
驚いたように見えたのは、僕にあくびをしてるところを見られたからだと思ったかららしい。


/9/28『涙の理由』

9/27/2025, 5:21:50 AM

「ココア入ったよ、休憩しよう」
「はーい」
引っ越しの荷解きの最中、今はまだ彼氏の声がキッチンから聞こえた。

同棲するための引っ越し。
これから2人で住んでいく。ソファや棚なんかも2人で選んだりして、我ながらどう見ても浮かれている。
結婚を視野に入れたこれからの暮らしは、いったいどうなるのだろうと期待と緊張の半々だ。

普段は仲がいい私たち。今まで一度もしたことないケンカをすることもあるのだろうか。
ケンカをした日は2人別々の部屋で寝たりして。その時はどっちがソファで寝るのだろうか。

またある時は――。

「こーら」

そんなことを考えていたら彼氏に声をかけられた。

「また考え事してただろ。冷めちゃうよ?いったん休憩にしよう」

軽く肩を叩かれて、現実に意識が戻される。
苦笑する彼氏は私の手を引いて、ダンボールだらけの部屋を出た。
キッチンのある部屋では、まだ私のココアと彼のコーヒーの入ったマグカップが湯気を立てていた。


/9/27『コーヒーが冷めないうちに』

9/25/2025, 2:54:12 PM

もしも、もうひとつの世界があるとするならば――。

もしも、もうひとつの世界の僕が、告白をしたならば――。

君の世界は闇に包まれて、二度と明るくなることはないだろう。

僕は君の笑顔が好きだ。
君の世界を暗くしたくない。
だから僕は、君に嘘をついた。

「かわいそうに。君のお父さん、殺されちゃったんだってね」

赤く汚れた手を背中に隠したまま、僕は君に笑いかける。

もしもこの世界の僕がこのまま嘘を吐き通したならば、君はこれからも僕に微笑んでくれるのだろうか。


/9/26『パラレルワールド』



針が逃走劇をやめた時、長身が短針に追いついた。
時計の針が重なって、時計塔の鐘が鳴った。

「私、もう帰らなくては」
「待って!せめて名前だけでも」
「ごめんなさい。もう行かなくては」

鐘が鳴っている時に繰り広げられた、新しい逃走劇の始まり。

シンデレラは、王子の手を振りほどき、カボチャの馬車へと急いだ。
靴が片方脱げているのに気づかずに。


/9/25『時計の針が重なって』

9/23/2025, 11:23:51 AM

「手を出して」

言われるがまま手を伸ばした。
差し出した手は勢いよく引かれて、ふわりと窓の外へ体ごと飛び出した。
落ちる、と思った体は、しかし重力に負けることなく空中へ浮かんだ。

「妖精を信じたからさ。妖精の粉で空が飛べるんだ」

彼はそう言った。

「さぁ、ネバーランドへ行こう」

彼は手を繋いだまま空の果てを指差した。


9/24『僕と一緒に』



曇ったグラスと同じように
僕の心には靄がかかっている

磨いても取れることのない曇り
太陽が降り注ぐ日は来るのだろうか


9/23『cloudy』

9/21/2025, 2:10:01 PM

虹の端っこはどこにあるのかな?
探しに行ってみよう

虹の端っこを見つけたら、向こう側に声をかけるんだ
「今からそちらに渡りますよ」って

そしたらきっと会えるよね
橋の向こうで君が待っているはずだ

もしも虹の橋を見つけたら
先に虹の橋を渡ってしまった君に会いに行くよ

/9/22『虹の架け橋🌈』



ブブブッ
ブーブブッ

スマートフォンがバイブレーションを鳴らす

ブーブブッ
ブーブブッ

私の座った正面の席にあるスマートフォンが体を震わせる。

『大好き』
『愛してる』
『会いたい』

私のメッセージアプリ欄に並ぶ言葉たち。
そのメッセージたちは、ずっと既読が付かない。
目の前にあるスマートフォンが送信先で、誰も見ていないのだから当然だ。

ブーブブッ
ブーブブッ

『ねぇ、会いたい』
『いまどこにいるの?』

誰も見ることのないスマートフォン。
主を亡くしたスマートフォン。
大事な大事な彼は、先日事故に遭ってもう帰ってこない。
答えの返ってこないスマートフォンに、私はメッセージを送り続ける。


/9/21『既読がつかないメッセージ』



朝が涼しくなってきた
夕方が終わるのが早くなってきた
夜に虫が鳴き出した

セミの騒がしさが静かになった途端
世界は秋の色に染まりだした

/9/20『秋色』

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