家の外では砂埃が舞っている。
窓の外を眺めても、昔のような木々や建物は見えず、砂塵が我が物顔で通り過ぎるだけだ。
二年前から突然起こり始めた砂嵐。
人々は夜の間だけ止むそれに合わせて、生活を変えた。
今では真逆の意味となった「昼夜逆転」。ぼくは今、世間の人々とは正反対の生活――昼夜逆転した生活をしている。
お日さまが昇っている間に置き、夜に眠る。母さんからは、早く生活を正しなさいと言われるが、これまで12年間この生活をしてきたんだ。今更変えられるはずがない。
猛威をふるっていた砂塵が止み始め、さらさらと砂のカーテンが地面に落ちていく。夜が来た。
今日は満月のようだ。窓越しにのぞく白い光がとても明るい。
雲ひとつない空は明日が晴天であるということを教えてくれている、と昔誰かに教わった。
それならば、とぼくはその誰かに教わった方法を思い出す。指を組み、目をつむり、月を想う。
(お月さま。明日もし晴れるのならば、久しぶりに太陽が見たいです。真っ青な空に輝く、太陽が見たいです)
風もない静かな夜。目を開けると、月のそばの星が瞬いた気がした。まるで返事をするかのように。
/8/1『明日、もし晴れたら』
「ただいま」
家に帰ると、まっすぐ屋根裏部屋に行く。
近頃はもっぱらぼくの部屋になっているそこに入ると、空気を入れ替えるために天窓を開けた。
一台置いた机の傍らにバッグを置き、ぼくは早速作業に取りかかる。
階下から声が聞こえた。
小さな妹と遊んでほしいとのことだったが無視をした。
可愛い妹の相手はしてやりたいが、お願いだから、これが終わるまでは一人にしてほしい。
ノートにえんぴつを走らせ、思案しては消してまた書くことの繰り返し。
一週間前から、もうすぐ誕生日の妹に贈る物語を書いている。
喜んでくれるといいなあと妹の笑顔を思い浮かべながら。
/7/31『だから、一人でいたい。』
あなたの澄んだ瞳は、キレイな泉のよう。
あまりにキレイだから、あなたの瞳に私の醜い顔がくっきり映ってしまう。
私はまるで鏡を見ているような気分になって、あなたの顔を見ることが出来ない。
「どうして顔を逸らすの?」
だなんて言わないで。
あなたのそのキレイでまっすぐな眼差しは私の汚い心をグサグサと刺すの。
あなたがキレイであればあるだけ、私は自分の醜さを痛感してしまう。
お願いだから、キタナイ私をこれ以上見ないで。
/7/30『澄んだ瞳』
ガタガタと荒い風が窓を鳴らす。
小さな君は怖がって僕のひざの上で震えている。
――こわい、こわい、嵐がくる日は誰かがいなくなってしまう。
そう言ってガタガタ震える君を、僕はなだめるように背中を撫でる。
大丈夫。今日は僕が隣りにいるから大丈夫。
たとえどこかで誰かがいなくなったとしても、君の前からは誰もいなくならないよ。
僕が隣りにいるよ。
寝るのがこわいと泣き渋る君。
二人きりの家から誰かが――僕が――いなくなるのがこわいと
外の雨のように涙をこぼす君。
濡れるひざがすっかり冷たくなった頃、君はようやく眠りについた。
だけど、僕は君から離れることはしないよ。
雨がやみ、夜が明けるまで。
/7/29『嵐が来ようとも』
・時間管理能力
・寝なくてもいい体力
出来れば上記を補えるほどの時間とお金
7/21『今一番欲しいもの』
こういうお題は素直に書くと欲にまみれますね。
私の名前は、ただの識別番号だった。
私が「誰か」ではなく、私が「どれか」分かるためだけの「名前」。
番号で呼ばれることに何の疑問も持たなかった。
「それ」が私だったから。
けれどあなたは、腕に刻まれた私の「名前」を見て、別の読み方で呼んでくれた。
初めて呼ばれたけれど、違和感を覚えることはなかった。むしろしっくりきて、とても嬉しかったことを覚えている。
あなたに名前を呼ばれていると、これまで呼ばれてきた名前を思い出して苛立ちを覚えることが度々あった。
けれどその番号で、その並びだったおかげで、私はあなたにそう呼ばれることとなった。
それだけは、感謝してあげてもいいかな。
「 」
先を行くあなたに呼ばれた。
あなたが与えてくれた私の「名前」。
/7/20『私の名前』
とあるパロ。