家の外では砂埃が舞っている。
窓の外を眺めても、昔のような木々や建物は見えず、砂塵が我が物顔で通り過ぎるだけだ。
二年前から突然起こり始めた砂嵐。
人々は夜の間だけ止むそれに合わせて、生活を変えた。
今では真逆の意味となった「昼夜逆転」。ぼくは今、世間の人々とは正反対の生活――昼夜逆転した生活をしている。
お日さまが昇っている間に置き、夜に眠る。母さんからは、早く生活を正しなさいと言われるが、これまで12年間この生活をしてきたんだ。今更変えられるはずがない。
猛威をふるっていた砂塵が止み始め、さらさらと砂のカーテンが地面に落ちていく。夜が来た。
今日は満月のようだ。窓越しにのぞく白い光がとても明るい。
雲ひとつない空は明日が晴天であるということを教えてくれている、と昔誰かに教わった。
それならば、とぼくはその誰かに教わった方法を思い出す。指を組み、目をつむり、月を想う。
(お月さま。明日もし晴れるのならば、久しぶりに太陽が見たいです。真っ青な空に輝く、太陽が見たいです)
風もない静かな夜。目を開けると、月のそばの星が瞬いた気がした。まるで返事をするかのように。
/8/1『明日、もし晴れたら』
8/2/2023, 6:55:19 AM