0

Open App
9/20/2023, 9:05:03 AM

ー時間よ止まれー
この世界でたったひとつだけ好きな時間があります。
私はその時間を常に心待ちにしているのです。
寝る前も 朝起きたあとも 常にです。
来る今日こそ 私が待ち続けていた日であり 人生で もう二度来ない日でございます。
私には 愛する人がおりました。
この日は 彼女の 愛した日であるのです。
生前の彼女が 常々楽しみにしていた日なのです。
私にはなぜこの日がそんなにも楽しみなものなのか全くの検討もつきませんでした。
彼女を亡くし 私ひとりになっても それは変わらずなにも分からないのです。
でも この日が来ると
なぜか 彼女がそばにいるような感覚に陥るのです。
だから 私はこの時間が好きでした。
ですが そんな ただの妄想 ただの錯覚では私に空いた空洞も 肌寒い気温も なにも 変わりはしないのです。
ただの まやかしでしかありません。
私はそっと靴を脱ぎ 手紙を置きました。
彼女へ宛てた手紙でございます。
私は きっと 彼女と同じ場所へは行けないでしょう。
それでもあなたを愛している。
という旨の書かれた手紙です。
愛した人のために死ぬなど 人間とは正しく愚かでしょう。
私も同意見でございます。
でも 隣に彼女がいないことを 減りもしないもう1人分の食事も たまに香る線香も 私には もう 耐えられないのです。
あなたが生きていた時間で 世界が止まってくれていたら。
私はこんなことをせずに済んだのでしょうね。

7/12/2023, 1:22:49 PM

ー今日の心模様ー
今日の心模様。
晴れ。
先輩とお話出来ました。

今日の心模様。
曇り。
先輩が女の人と歩いていました。
でも大丈夫。
先輩彼女いないって噂だから。

今日の心模様。
晴れのち曇り。
今日は先輩から挨拶してくれました。
でも 隣にはあの女がいます。

今日の心模様。
曇りのち雨。
今日の先輩 ずっとあの女の近く。
あんな 距離近くて。
私もあそこに行きたいのに。
あの女はなに?

今日の心模様。
曇りのち晴れ。
先輩。
あの女と登校してきた。
でも 私と目を合わせてくれた。
うれしい。

今日の心模様。
雨。
変な噂がたってます。
あの女と先輩が付き合ってるって。
そんなのありえないのに。

今日の心模様。
曇り。
友達から 先輩は諦めろって言われた。
友達のゆみちゃん。
あの噂信じてるんだ。
大丈夫だよ。
ゆみちゃん。

今日の心模様。
曇り。
最近の先輩。
ずっとあの女と登校してます。
なんで?どうして?

今日の心模様。
曇り。
ずっとずっと。
先輩に話しかけてます。
先輩は笑ってくれます。
でも なんだか前と違う。

今日の心模様。
晴れ。
先輩から呼び出されました!
明日話があるって!
やっぱりあの噂はうそなんだ。
うれしい。先輩。

今日の心模様。
嵐。
先輩 あの女と付き合ってました。
許せない。
ゆるせない。

今日の心模様。
雨。
悲しい。
悲しい。
私は先輩に裏切られたのでしょうか?
あんなにも話してくれたのに。
あんなにも一緒にいたのに。
ひどい。
ひどい。

今日の心模様。
雨。
そうだ。
そうか。
そっか。
邪魔なものは消せばいいのか。


今日の心模様。
晴天。
私は先輩を諦めました。
あんな男。
あんな女に尻尾を振る馬鹿な男。
いらない。
いらない。
今日の学校には2人いません。
明日からもずっと。
2人たりません。
でも私は大丈夫。
同じクラスの男の子。
お名前 山口 遥斗 くん。
新しい。
私の。

7/10/2023, 1:33:11 PM

ー 目が覚めると ー
彼女が死んだ。
居眠り運転をしていたトラックに轢かれ 彼女は空の煙となった。
僕は 今でも それが理解できない。
ここは夢で 夢から覚めると 彼女はきっと生きている。
寝すぎ と怒ってくれる。
きっと きっと。
そうで あって 欲しい。のに。
どうしようもなく ここは現実で 目の前の彼女は ただの無機質な墓石でしかないのだ。
夢から覚めても 覚めても 彼女は笑わないし。
日に日に苔が生えてしまう。
何度目かの夏か分からない夏が通り過ぎ。
彼女はまた帰路に着いた頃だろう。
僕は涙で濡れたマクラと セミの鳴き声と 嫌な暑苦しさと共に 彼女がなくなってから 何百回も繰り返した あの 虚しい なんとも 虚しい。
誰もいない。
そんなベッドで ただの1人で 眠りにつく。
また。
眠りにつく。
きっと 目が覚めても。
いくら覚めても。
彼女はいない。
彼女のいない現実と 嫌な暑さが 僕を覆うだろう。
早く 冬になって欲しい。
夏なんて 彼女が居ない虚無感が強くて トラックを見る度に吐き気がしてしまう。
彼女が消えた夏と 彼女を殺したトラックと。
夏なんて死んでしまえ。
彼女の代わりに 死んでしまえ。

7/6/2023, 10:05:10 AM

ー 友達との思い出 ー

月が綺麗なこんな夜はいつもあの日のことを思い出す。友人たちと意味もない会話を奏でながら作った秘密基地。今ではきっと家が立っているのだろう。僕たちが作った青春は大人たちの手によって意図も簡単に崩されてしまった。それでも僕はあの日々を青春だったと疑わない。
今では僕達は大人になり、会社も住んでる場所も離れ離れになってしまったが、満月の夜はまるで隣にでもいるような感覚になる。2人には僕の事など思い出す隙もないくらいの人生を歩んで欲しいものだ。でも、またいつか彼らと会うことが叶うなら。僕はまた語り合いたいと思ってしまう。今度はジュースではなく酒を酌み交わしたいと、今度こそ伝えられなかった気持ちを伝えたいと思うのだ。

7/4/2023, 4:33:23 PM

ー 神様だけが知っている ー
僕の目の前には 女がいる。
彼氏持ちの 女。
でも 世間はきっと この状況を浮気とは思わない。
なぜなら 僕らは女同士だから。

彼女の綺麗な手 艶やかな髪 甘い香水の匂い 誕生日も 幼稚園時代も 笑う時に出来るえくぼも どんな人が好きか どんな人が嫌いか どんな食べ物が好きか 照れる時に髪を耳にかける癖も 実は恋愛映画よりもアクション映画の方が好きなことも。
全て知っているのに。
彼女の隣は僕ではなく 他の男で。
ただの性別で 生まれた時の2択を間違えただけで 彼女の隣に立つことは きっと 永遠にありえない。
でも それでも僕はいいと思う。
彼女は僕のこの淡い恋心を知らない。
きっと。
ずっと知らない。
これからも これまでも。
知られたら 彼女の隣には居られなくなるから。
恋人にはなれないから。
せめて 友人として
親友としては隣にいたい。
居させて欲しい。
その権限を 軽々しく ただの感情ひとつで手放すほど 僕はバカじゃないから。

だから この恋心は
僕と。

Next