夢路 泡ノ介

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2/7/2025, 7:49:58 AM

丘の上で貴方は立っている。
喧騒と隔たれた、展望できる世界の上に立っている。
回る暗闇には星屑が、導として眠らず見下ろしている。

見よ、眠りに満ちてなおも光を失わない世界を。
我々が住まう、火と雷をものにしたこの世界を。
黎明から幾星霜、その成り果てた頭打ちの現よ。

されど人に終わりはない。歩みを止めることを知らない。
たとえ、天から火を盗んだ罪を着せられようと、
その先には新たな力が火花のように作られるのだから。

見よ、夜の帳に火がついた。
長い陰りを曙が染めてゆく。
翔ける小鳥が始まりを囀る。

我々に終わりはない。歩みを止めることはない。
たとえ、臓腑を大鷲に啄まれるような苦しみを受けようと、
その陰りを英雄たる者が力強く裂いてくれるのだから。

丘の上の君よ。
昨日までの夢から覚め、
東雲と共に進みたまえ。

【静かな夜明け】

2/6/2025, 7:38:26 AM

貴女と僕。
心の響き。
交わす瞳。
揺れる水面。

鼓を叩いて赤らめる頬にそっと触れて、
ふと俯いた視線が起きるまで見つめる。
鼻先にかかる吐息が言葉に変わっても、
僕らの世界は時が止まったまま。
雑踏と灯りの賑やかな地上にできた、
僕らの世界は見えない壁で縁取られている。
暖かな人肌で寂しさを熱らせ、
寒夜と忘れそうな温もりに雑音も閉ざされた。

貴女と僕。
心の響き。
交わす唇。
二人の夜。

【heart to heart】

1/13/2025, 11:36:13 PM

口伝や書物では味わえないものがある。
未知が既知になったとき、人はその黄金の瞬間に立ち会う。
夢見ていたこと、それはいつか辿り着きたいと願う場所。
一度の生ならばその目に照らしてみよ。
老いさらばえても、思い出とは味わい深くなるもの。
セピアに染まることなく、自分だけのアルバムは輝き続けるのだから。
人よ。旅をせよ。
世界は君の未知で満ちている。
求めて心を掴まれたまえ。
夢を抱いて進むのだ。

【まだ見ぬ景色】

1/13/2025, 3:25:52 AM

焦がれるように惹かれ、
だが二度と叶うことはなく、
なおも貴方は思いを募らせる。
彼女に触れて溶けゆく心を、
いかに内に秘めようとしても、
かすかに綻んで手を取り合い、
奪われるがままついていくことを。

天藍の空が広がる草原で君たちは、
童心にかえって彼方へと舞い進む。
やがて額を合わせ、囁き合い、
日が眠るまでのひとときを長く思えたであろう。

一度も唇を重ねることはなく、
吸い込まれるがままに見つめ合う。
その狭間にできた、決して叶わないもの。
貴方は夢から覚めた頃には、
その答えをすでに知っている。
言葉にせずとも、その形がどのようなものかを知っている。

だからこそ貴方は密かに希う。
この身も心も沈んでも構わない。
彼女にまた会えるのなら、
何か一つ、手放してしまっても構わない。
どうかもう一度、もう一度あの時に戻しておくれ。
あの続きをどうか、私を二度と目覚めさせないようにしておくれ。
どうか、どうか。
私を夢の淵へと落としてくれ。

【あの夢のつづきを】

***

あけおめことよろ。
マイペースに書いてくヨ。

11/10/2024, 11:54:06 PM

穂が揺れる。風で揺れる。
照る陽は穏やかに、空も晴れやかに。
朱も花もない地で実り、細波のようにこすり合う。
肌を撫でる寒空もすぐそこに。
縁側で煎茶を傍らに、眺めるひと時ももう暫し。

穂が揺れる。風で揺れる。
刹那の季節に、心も揺れる。

【ススキ】

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