夢路 泡ノ介

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9/26/2024, 11:57:47 PM

鬼女らが淑やかに笑みて眺めるは、
黄昏色から移ろうた朱の山。
涼風が金木犀の匂いを乗せて、
晩夏の終わりを告げている。
人の世はまた緋色で染まり、
いずれ枯れるまで紅で賑わう。
湿りも離れ、冬将軍が腰を上げ、
訪るまでの宴は赤いまま。

【秋🍁】

9/24/2024, 11:36:54 PM

貴方は暗闇のなかにいる。
貴方は一人でいる。
光の糸すらない、黒く塗りつぶされた空間にいる。
何も見えない。
音も気配も、一欠片もない。
ここはどこだと問いたくても、答える人は誰もいない。

貴方は歩き出した。
しかし、変わらなかった。
貴方は手探ってみた。
しかし、何もなかった。
貴方は声を発した。
しかし、響かなかった。
貴方は不思議に思った。
その心は好奇心からではない。
体がこわばった。
何かがこちらを見ている気がしたから。
だが、どこからなのかは分からない。
足が竦んでしまっている。
何かがいる、その予感が錘となって封じている。

喉の奥から飛び出そうな感情を寸前まで抑えている。
そんな貴方は、呼吸が微かに乱れていることに気がついた。
どうしてここにいて、
この出口の兆しもない場所に囚われているのか、
その疑念すら呑まれていたほどに、焦燥していることにも。
貴方は、ようやく意識を整えた。
見えない何かを知るために、心を固めた。
鼻の奥へと空気を深く吸いこみ、
息を押し殺し、そっと耳を澄ませた。

何もなかった。
だって貴方は、一人でいるのだから。

【形の無いもの】

9/23/2024, 10:36:26 PM

くぐって楽しんでいた小さな大迷宮。
次から次へと移って、いざてっぺんへ。
それも今やこぢんまりなオブジェ。
胸が躍る心は、深い底へと迷い込んでしまった。

【ジャングルジム】

9/18/2024, 10:57:55 AM

人の営み。
数多の灯。
夜の帳にて煌めくは、
眠りを知らない光の真珠。

【夜景】

9/17/2024, 3:30:09 AM

怒りも、悲しみも、
喜びも後付け。
空とはそれほど豊かな世界。
人でも操れない上位空間。
地を濡らす雫はどれほどの恵みか。
身を濡らす雫はどれほどの慈しみか。
この星が滅び、生まれ変わったときから、
再び滅ぶまで、青くあり続ける。

回る火の剣と形容された轟音で震えたとき、
人々はこれを怒りと喩えた。
喪い、押し殺す声をよりかき消されたとき、
人々はこれを悼みと呼んだ。
日照りで枯れた畑と木々が雨で潤ったとき、
人々はこれを喜びと捉えた。
すべての雫は人のように、
とめどなく溢れる涙のように。

怒りも、悲しみも、
喜びも後付け。
でも、人はこの空の泣き声を、
そう例えずにはいられない。

【空が泣く】

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