ぱちぱちと、雑踏に紛れて。
暖かいね、
そう言いながら微笑む君を見ると
心がすーっと、浄化されたきもちになる。
白い息に、赤い炎。
なんだか落ち着く色。
ずーっと、見ていられる。
ねえ、聞いてる?
私の心臓、炎よりも揺れてるんだから。
君のせいだよ。
と、いいながら袖を掴む君。
もしもここから炎が消えたとしても
きもちは暖かいまま、
ぼくは君の灯になる。
11/8「灯火を囲んで」 8
まだ、憶えてる。
自販機の灯が、
寒々とした青色から赤色になる季節。
これ、好きだったよな。
そんなことを考えながら、迷わずボタンを押す。
片手に缶コーヒー、
もう片手にココア。
いつも、苦手なコーヒーを冗談でわたしてくる人。
どんな味だったっけ
それでもわたしは、
あのときの温もり、しあわせを
いつまでも、憶えてる。
11/6「冬支度」 8
目にかかる前髪、
長い睫毛、
すこし尖った唇。
ああ、このまま時が止まればいいのに。
休む間もなく、
只管、ながれ続ける時間に逆うように。
剥がれ落ちた記憶の破片をひとつ、またひとつ
組み合わせた。
甦る、夏のおもいで。
あの日、きみと話したこと、
嬉しそうな笑顔、
真剣な表情。
ああ、やっぱり覚えている。
時を止められなくても。
11/5「時を止めて」 8
謙虚で、素直な君が好き。
そう言って、彼がくれた金木犀の花。
なんでもない日でも花束をくれる。
たいせつに、たいせつに。
彼はとても、魅力的なひと。
金木犀の香りのように、一度見たら忘れられない。
それだけ、美しいひと。
鼻歌をうたいながら、花瓶の水を取り替える彼。
嬉しそうに、私に笑顔を向ける彼。
上手に写真を撮れて、こどものように無邪気に喜ぶ彼。
そんな姿を見ながら、
中途半端に読まれた本を、ひらいた。
この金木犀、しおりにしたいなあ。
忘れないように、日付も書かなくちゃね。
忘れたくても、忘れられない秋のひととき。
11/4「キンモクセイ」 8
あとすこしだけ、
ほんの少しだけでいいから。
触れ合っていたかった、
目を合わせていたかった。
笑っていたかった、
君に微笑んでほしかった。
「おはよう」と「おやすみ」を伝えたかった。
「ただいま」と「おかえり」を伝えたかった。
ただそれだけなのに。
そう呟きながら、
脈を感じ、仄かに感じるバニラの匂いを辿る。
まだ、殘っているその匂いに包まれて、眼を閉じた。
11/3「行かないでと、願ったのに」 8