イカワさん

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10/5/2024, 10:44:35 AM

冬の冷たい風が肌をそっと撫でる。思わずぶるっと身震いをして、より一層体を縮こませる。

パチパチと明るい焚き火に身を寄せて今は何処にいるのか分からない、あの人の事を考えていた。

今は何をしているんだろう。彼の最後の言葉は何だった?何で僕はあの人と止められなかったんだろう。

ひんやりと静まり返った森では考えたくないことほど頭に浮かんできてしまう。負の感情が僕の心に霧をかける。

吐く息が白い。白…僕の親友の色。でも、こんなに冷たくなくてもっと温かみのある、優しい白。

「…早く君に会いたいよ。もう春が待ち遠しい。」

ふと空を見上げると黒い宇宙に星々が散らばっていた。紫みがかったもの、白いもの…そして青い星も。紫白青、それぞれの色3人の顔が浮かび上がる。

「青い…蒼いあの人も同じ空を見ているかな。緑の星は無いけど…僕のことを、思ってくれているのだろうか…」

何もかも見透かされた様な澄んだ青。覚えているのはそれだけ。あの瞳を細めて僕の名前を呼んでよ。






「聞こえているさ、覚えているさ…。俺の大切な息子だからね。あの駄目親父…なんて言われているかと思ったら…ふへっ、照れくさいじゃあないか。」

「そりゃあ緑の星なんてこの世界にもないさ…。でも星と星を繋ぎ合わせればいつでもお前の事を思い出せる。」

「だから、そんな悲しいことを言わないでおくれよ…。」

「今すぐその涙を拭ってやりたい。でも…俺にそんな資格があるとは…俺は思えないんだ。」

「だから、いつかお前の前に颯爽と現れて涙なんか吹き飛ばしちまうさ。この空がある限り。」



追伸 
あの可愛い物語をお借りさせていただきました!

10/4/2024, 11:11:22 AM

「こんばんは。麗しいお嬢さん。」

「……こんばんは…?」

「こんなに素敵な夜を貴方様と過ごせるだなんて、俺は贅沢者ですね。」

月に照らされる大きな人影。黒い髪に黒い瞳。夜の光を反射して輝く。

「わ、わたし…が…?」

「?ええ。」

目の前にいる人とは!比べのものにならないぐらいの私。こんな、醜い私?太ってて可愛い子も居るけれど、あれは顔が元々可愛いから。

「こんなに、暗くなるまでお勉強されてたのですか?」

「え、あ、はい。塾に通ってて…」

「ふふ、そうですよね。」

「…?」

信号が青になってしまう。こんなにカッコいい方…きっと誰かと勘違いでもしているのだろう。暗くて、顔が良く見えていないのだろう。きっと。

でも、勘違いじゃなかったら?多分、私は一生後悔する。見た目だけで判断してほしくない、と思うが私も今同様にこの方の見た目に惚れてしまったようなものだ。

でも、弁解したい。それだけではない。柔らかい物腰、ミステリアスな雰囲気…なんだか、全てが浮世離れしている感覚。

「もう、行ってしまわれるのですか?」

「…私に何が御用があったのではないですか?良ければ、聞かせてください。」

「やはり素敵な方ですね。何を隠そう、私めは貴方様をお助けに参りました。お父上のことでお悩みになっているのでしょう?」

「…は、い。」

何でそれを?どこで知ったんですか?聞きたいことは沢山あった。たった2文字、返事をするので精一杯だった。

「さあ、行きましょう。お姫様。もうあんな愚者に悩まされる必要はないのですよ。」

「それは、魅力的です。…でも母と弟を残しては…躊躇してしまいます。」

「それはそれは、貴方様のお優しいに感銘ですね。では、今夜だけでも…」

「私と共に踊りませんか?」




あは、あははは。ははっ。はっ…あは…はぁ……。また、切れちゃった。もっともっと欲しい。欲しいの。辛い辛い辛い辛い辛い辛い辛い辛い辛い。もっと気持ち良く。踊りたいから。踊りっ、おどっ…はぁはぁ、ふふふ、あはは…ふへっ。

10/1/2024, 1:16:20 PM

ボーっとする。この時間が好き。何も考えなくていいから。あの人のことも。全部。全て。

9/30/2024, 11:20:00 AM

大丈夫。大丈夫だから。あの人は。きっと、きっと。あしたこそは…!

白い面に囲まれた無機質な部屋。ツーツーと規則出しい音だけが響く。無表情のはずなのに何処か無邪気に見えてしまう。…こっちの気も知らないで。どれだけ、心配してると思ってるの?どれだけ、貴方の為に時間を割いたと思っているの?ねぇ、なんとか言ってよ。今すぐ起きて、私の目を見て。

「…ばか」

「…起きてよ、起きてよ。私に微笑みかけてよ。ねえってば。ねぇ…ねぇったらぁ……!」

言葉が続かない。上手く言葉が出てこない。頭の中がぐしゃぐしゃだ。それでも話そうと試みるから、しょっぱくて悲しい味がする。





「………お願い。今日、今日…起きてくれないと…。」

「……もう、ここに居られないんだから…起きてよ…明日はもう無いの。早く…早く………。」

「……お姉ちゃん……。」

9/29/2024, 10:44:59 AM

落ち着く。…ここは何処だろう?白い。明るい。嫌…暗いのか?情報が何も無い。入ってこない。音も無い。匂いも。まるで五感が全て麻痺したのかのような、そんな感覚。

壁は?無い。ならば、野外?でもこんな場所は日本、嫌世界には無い。無いはずだ。

まず、歩いてみる。何かが見えてくるかもしれない。誰かが居るかもしれない。歩く。歩く。歩く。アルク、アルク…。歩いているのか?進んでいるのか?どうして、こうなったのだろう?物好きの大金持ちにでも攫われたのか?それともここは、死の世界?昨日は、何事もなく寝たはず。では孤独死か。自分らしいさ。これも又、運命…。

くだらないことを考える。考えていないと落ち着かない。少しでも情報が欲しいのだ。情報を求む。

「誰かー、いませんかぁー?」

「だーれーかー。」

「…………阿呆らしい。」

何も無い。只酸素を吸って二酸化炭素を出しているだけ。只、生きているだけ。存在しているだけなのだ。

「死んだのか?一番現実的なのは…俺は死んだんだろ?天国行きなら天使でも来いよ。来ないんなら地獄か?なら悪魔でも来いよ。閻魔でも舌取りに来いや。」

れーっと舌をさらけ出し、ついに倒れ込んで大きな独り言を漏らす。

「風変わりのニンゲンモニタリングかよ。カメラもっとこっち寄れよ。見れえねえだろ?見えてねぇだろ。」





「……………誰か〜……。チッ…。」

「ああああああああぁああああああああぁ」

ふらふら立ち上がって脱力した腕を宙に投げ出す。

「た!ひゃ!は!や!ろ!な!みぃーやっはっはぁー!」

叫ぶ。叫ぶ。音を出せ。とにかく大きな音を。もっと。もっと…!もっと!!





しろーい。まっしろぉーい。ひろ〜いせかいに。えーえんにぃ?グッドバイ!

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