「こんばんは。麗しいお嬢さん。」
「……こんばんは…?」
「こんなに素敵な夜を貴方様と過ごせるだなんて、俺は贅沢者ですね。」
月に照らされる大きな人影。黒い髪に黒い瞳。夜の光を反射して輝く。
「わ、わたし…が…?」
「?ええ。」
目の前にいる人とは!比べのものにならないぐらいの私。こんな、醜い私?太ってて可愛い子も居るけれど、あれは顔が元々可愛いから。
「こんなに、暗くなるまでお勉強されてたのですか?」
「え、あ、はい。塾に通ってて…」
「ふふ、そうですよね。」
「…?」
信号が青になってしまう。こんなにカッコいい方…きっと誰かと勘違いでもしているのだろう。暗くて、顔が良く見えていないのだろう。きっと。
でも、勘違いじゃなかったら?多分、私は一生後悔する。見た目だけで判断してほしくない、と思うが私も今同様にこの方の見た目に惚れてしまったようなものだ。
でも、弁解したい。それだけではない。柔らかい物腰、ミステリアスな雰囲気…なんだか、全てが浮世離れしている感覚。
「もう、行ってしまわれるのですか?」
「…私に何が御用があったのではないですか?良ければ、聞かせてください。」
「やはり素敵な方ですね。何を隠そう、私めは貴方様をお助けに参りました。お父上のことでお悩みになっているのでしょう?」
「…は、い。」
何でそれを?どこで知ったんですか?聞きたいことは沢山あった。たった2文字、返事をするので精一杯だった。
「さあ、行きましょう。お姫様。もうあんな愚者に悩まされる必要はないのですよ。」
「それは、魅力的です。…でも母と弟を残しては…躊躇してしまいます。」
「それはそれは、貴方様のお優しいに感銘ですね。では、今夜だけでも…」
「私と共に踊りませんか?」
あは、あははは。ははっ。はっ…あは…はぁ……。また、切れちゃった。もっともっと欲しい。欲しいの。辛い辛い辛い辛い辛い辛い辛い辛い辛い。もっと気持ち良く。踊りたいから。踊りっ、おどっ…はぁはぁ、ふふふ、あはは…ふへっ。
10/4/2024, 11:11:22 AM