もっと知りたい
そう思えたならば、幸せだったのかもしれない。
ボクはポツリ、一粒の雨のように小さく呟く。
不思議と空は晴れているのに、雨は降ってた。
その雨は黒く、黒く、黒く、苦い味だった。
まるで、甘いケーキが焦げた灰を味わったような感覚。
もっと知りたい、と思うほど、ボクはそのケーキを食べる。
苦くて、悲しくて、辛くて、美味しくない灰のケーキ。
不思議と、味わい続けたから麻痺していたのに、感覚がなかったのに、思い出した。
ボクは、そのケーキを食べるのを何十年も止めなかった。
結果、味が分からなくなった、が、
味が分かると、食べるのを止めた。
そのケーキは、まるで知れば知るほど、灰の味がするからだ。
「もっと知りたい、そう思えたならば、幸せだったかもしれない。」
そんな事をポツリ、綺麗に晴れた青空の日に、心は一粒となる。
ボクは、幸せだったかな、もっと知れたら───なんて。
そんな事を思いながら、
食べていたケーキを綺麗な青空に向かって灰を散らせる。
そうすれば、苦い灰は消えて、綺麗な青空となる。
もっと知らない方が、幸せかもしれない。
なんて、ポツリ、まるで乾かない空に呟きながら。
タイミング
今年の夏は暑い。
だが、ボクはそんな暑さに構わず散歩をするのが好きだ。
どちらかと言えば、去年より暑くない、と思ってしまう。
ボクは散歩が好きだ。
鬱になった頃は全く出来なかったが、
最近は趣味に散歩が参戦したのだ。
毎日散歩はするし、外に出て日に当たって夏を感じるのが好きだったりする。
そんなボクを周りの人は「変な人すぎる」「熱中症に気をつけてね」「そんな暑い日に出るのはヤバすぎる」なんて言う。
まぁまぁ、分かりますよ。
ボクは確かに三十五度でも余裕で三、四時間、休憩なしで外を歩くのだから、そりゃ〜引かれる。
ボクはただ趣味でのんびり音楽を聴きながら、あるいは人と通話しながら、ボーッもしながら歩くのが好きなのだ。
足は歩きすぎて鍛えられたせいで筋肉がかなりついた、代わりに足は筋肉で太くなっていく一行だ。
けど、皆は揃って言う、「冬なら外出れる」と。
ボクは歩くなら今の夏の方が好きだから、
タイミングが合わないのだ。
いや、まぁ、散歩が趣味なボクなら冬も歩くと思うけど、
一緒に散歩したい友人達は皆、「冬がいい」と言う。
いかにボクが人とタイミングが合わないのを感じる。
いいのさ、いいのさ、ボクは勝手に歩いてますから。
でも、人がいると嬉しくてついつい喋ってしまう。
だから、本当は誰かと一緒に散歩がしたい。
夏…今はタイミングが悪い、早く冬になれば皆と歩けるのに。
その頃にはボクは別のことで忙しそうな気もするが、
それもそれで結局は散歩しているのだろう。
あー、早く冬にならないかなぁ?
なんて、残り、数ヶ月の夏を楽しむボクだった。
星を追いかけて
星というのは生まれた頃からあると思う。
ボクが生まれた時、星はどんな輝きをしてたのだろう。
家族や友達、仲間が生まれた時にも星は輝いていたのだろう。
それはそうとして、星って美味しそうだと思う。
星を見る度にボクはお腹が空く、たまにだけど。
ご飯の上に乗せても美味しそうだし、
そういうお菓子もデザートもありそうだ。
なんなら今の季節的に、
かき氷とかにかけたら美味しそうではある。
ひんやり冬のように透明な冷たい氷に、
甘い好きな色のシロップの上にキラキラ虹色に輝く小さな星。
その星が乗ったかき氷の味を想像するなら、
きっと口の中で星たちがシロップの色に合わせた、
色とりどりの甘い音楽で踊るようにぱちぱち足音を鳴らして、
星たちは楽しそうに不思議な味がするのだろう。
ボクはそれを口にすれば、
きっと星はボクの後を追いかけるように、いろんな味のする流れ星は、甘いシロップと共に奏でる味は忘れないだろう。
このかき氷はきっと巷で大人気となり、
気づけば夏の定番メニューになっているのかもしれない。
なんて、かき氷すら作ったことの無いボクがそう思う。
そもそも最近はかき氷なんて食べたか?
一年以上は食べてないかもしれない。
でも想像したら美味しそうだったもの、仕方がない。
そんなボクは星を眺めるのが好きだ。
特に冬の夜は遅くまで歩き、
その中で見る星空が好きだった。
まるで地球の周りを巡り、
星たちはボクたちを追いかけるように輝く。
それがとにかく綺麗で、美しかった。
だからかき氷に乗せたら美味しそうでは?
…なんて思ったのかもしれない。
流石にそれはボクだけだろうが、
星の輝きはいつまでも変わらない。
星たちはいつまでもボクたちを追いかける。
その輝きを失うこともなく。
星たちはいつまでもボクたちを見ている。
その輝きを失うことがなく。
星たちはいつまでもボクたちを魅了する。
星達は輝きを失わずに、永遠に。
その星たちと踊ってしまうような夜。
その星たちが踊ってしまうようなかき氷を想像しながら、
星を追いかけて、ボクは夜を歩いていた。
今を生きる
ボクは鬱になった。
と、言うのは昔からの話。
鬱と言うのはかなり難しいもので、今も頑張って向き合っている。誰かに理解されるのはまず難しい病気。
もはや一生治らないのだから病気と呼んでいいかすら分からない。
ボクはそんな中、なんだかんだいって今も生きていた。
色々あったさ、本当に。
この前に書いた文章なんて、
鬱真っ最中だったような気もする、あんまり覚えてないけど。
鬱と言うのは向き合うタイミングが難しいと感じる。
タイミングを失えばそれは地獄よりも深い所に落ちていく。
地獄、いや、深海?いや、沼かな?それよりも深い、闇の中。
なんにも見えない場所に取り残されて、一人孤独に歩き続ける。
周りには誰も居なくて、誰も助けてくれない闇の中。
ボクはひたすらどれぐらい歩いたか分からないような、場所にずっと居た。
時間がどれほど経ったかすら完全に忘れるぐらい、
今を全く考えれなくなるぐらい、
ボクは目の前も周りも真っ暗で見えないぐらい、の場所を彷徨い続けた。
気づけば光のある先に来れた。
気づけば周りも見えるようになれた。
気づけば今を生きてた。
ボクは今も向き合っている。
それは、鬱、と、生きる、事だった。
ボクにとって、鬱と生きる事は別個だった。
鬱は鬱として心から死にたい気持ちを向き合わなきゃいけない。
生きるは生きる事として、日々、変わらない空を見ていた。
だからこそ鬱も生きる事もボク自身の事も、
向き合わないといけない。
そんなボクは今、なんとなく生きている。
周りの皆みたいに、普通に、生きなきゃって思う事がなくなった。
今は今で、なんとなく生きてたら、良いんだなぁって感じる。
無理やり自分から生きていたい訳では無い、
無理やり周りに言われたから生きてる訳では無い、
無理やり現実で頑張ろうなんて思っている訳では無い。
ただ、人生の九割も心の底から苦しんでるのに、
今も命があって、生きてしまったからには、生きるしかない。
そう思って、ボクは今を生きる。
まって
そう言って、あの時、自分自身を抱き締めれば良かった。
ボクはいつもそうだった。
いつもひとりぼっちだから寂しい、
泣き虫なくせに涙を堪えて、
人の頼り方も分からない、
甘え方だって知らない、
ボクは夜、ベランダから外を眺めてはいつも泣いていた。
ボクは何度も呼吸する場所に手をかけた、
ボクは何度もボーッとした、
ボクは何度も見ちゃいけない世界を見た。
そんなボクは、幸せだったのかな?
今も夜、寝れない時は外を窓から眺めては思う事。
あの時、誰かに止められたら。
あの時、誰かに助けを求めれたら。
あの時、誰かに相談していたら。
ボクは、本当のボクを認めれたのだろうか?
そう思う前に、ボクはきっと、ボクにこう言うだろう。
「まって」
それは、最悪な嫌な言葉にも、最高な救いの言葉にも聞こえる。
この言葉がある、ない、とでボクはどんな未来だったのかな?
今も夜は、朝になる為に時間が進む。
朝が来たら昼が来て、
昼が来たら夕方になって、
夕方になったら夜になる。
そうしたらまた、夜は朝になる。
ボクもそうやって、生きてきた。
不思議だなぁ。
今も泣き虫だなぁ、ボクは。
そうやって時間は過ぎていく。
時間は待ってくれない。
けど、ボクは、ボク自身は待つことはできる。
そうやって、人生はできてるんだなぁと感じる。
不思議だよねぇ。
今もボクは、この待ってくれない夜を過ごす。
終わりのある、朝を迎える為に。