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9/2/2024, 3:31:53 PM

心の灯火。

提灯を持って、ただその火が消えない様に、ケタケタと下駄を鳴らして歩く。そんな風に生きてみたかった。
生き方ってのはそれぞれだ。僕は毎日同じものを食べ、飲み、感じ、見て、笑い、眠る。喜怒哀楽は平常で、突飛な事はご法度。それが幸せだ。
眠る時にふと天を仰ぐ。今日も、昨日も明日も少しも変わらぬ私の天井。天変地異でも世界戦争でも、親の離婚でも変わらない、この天井。
何か大切なものが無くなるのは、本当に一瞬で、一生で、人生の後悔なんてものはこの瞬間に支配されてしまう。
心に秘めた思いとか、10年越しの言葉とか、はじめの第一歩だとか、記念すべき出来事は幾らでも作り出せるのに、一度壊れた思い出のギターはもう戻らない。
心に灯火を宿し、滑稽なまでに一点で、精を出し、心根を健やかに保ったとしても、結末は唐突で無配慮だ。
だからかな。その灯火の株を移し変え、油を足し、窓を閉め、世話のかぎりを尽くしてやる。
まだ、消えないように。まだ終わらない様に。

9/1/2024, 3:02:10 PM

開けないLINE。

ただ気が向かないだけかもしれない。でも、それも、未読の理由の一つになり得るのだ。
私はまだ信じていた。君が、私の期待通りで、意思に反さず、忠実で誠実であると。この手元にある機械なんかで、現実をすり替えられる事は無いと。
僕はいつも恋をしていた。見目に惚れ、口調に惚れ、思考に惚れ、その言葉に心を打たれた。それがただの鞭でも、布団に包んだ鉛でも、ドブに埋まってしまった宝石のように感じた。
多分きっと、只々単純で、無垢で潔白で、愚かだったのだと思う。自分の中にあるモノ以上を疑わず、無いものとして目を閉じた。
誰の警告も聴こえず、季節の音すらも忘れた自分に、残るものがあるのかも、考えられなかった。
一度開くと既読の付くLINE。いくら長押ししても目に映ってしまったモノに変わりは無い。
向き合おう。と、簡単に言う。
でも、だって、どうしても、それはむりだ。
ならば捨ててしまえば良い。そんな機会は。

7/30/2024, 3:24:48 PM

澄んだ瞳。

子供は時に、澄んだ目を向け、腹の中で悪鬼を飼う。淀んだ目をした大人でも、一本の矢を必死に抱え守っている事もある。
私には、譲っても譲っても譲っても、いくら譲っても譲れないモノがある。それは生活の上でどれほど効率を下げようが、離職ようが、死ぬしかなかろうが落とせない質なのだ。世界に一矢報いる様に、恨み言でも吐きながら、血反吐を飲んで食い下がる。
僕には避けても倒れても壊れても、逃げられない時がある。それはきっと、自分の下した選択以外では耐えられ無いような道だ。歩み寄ることを学び、差し出すことを許諾し、跪くことを選んでも構わない。最後にこの手にその矢があるのなら、どうとでもなれば良い。
ただ、人様には迷惑を掛けない。
大人であるという利点は、この執念、ただ一点に他ならない。
その背中に、頼れなくなったのはいつからだろう。いつ、手を広げ、身体を預け、上を見上げて甘えることを忘れたのか。
怖い。こわい。恐い。
この瞳はまだ、晴れているのか。

7/7/2024, 2:54:43 PM

七夕。

星に願いを、2人に祈りを。天の川のあの話を、どれだけの人が知っているのだろうか。いつから、語られているのか。
僕は信じていた。自分は、自分の思う凄い人と、なんの遜色も無く、いつか必ず輝くのだと。盲信し、懇願し、努力した。
私の希望はただ一つで、それは健康に死ぬこと。病気もせず、怪我もなく、レールの上を散歩する様な人生を望んでいた。その為に、運動をし、野菜も食べ、しっかり眠った。
信じた未来なんて、神様の小指に引っかかった小枝みたいに、容易く振り払われるものだと知らなかった。
あの、七夕の日に使った一生のお願いは、なんの効果も持たなかった。
全て、救うのは人で、落ちるのも人で、自分だった。
僕は、目を背け、ただ自分を諦めた。私は、1人の医者に助けられ、今生きている。この差異。
星に願いを。人に運命を。己に信条を。
ただそれだけを、渇望する。

7/3/2024, 1:25:32 PM

この道の先に。

何かがある。この狭い路地を抜ければ、這い出れさえすれば、きっと何かが。
毎日が行き止まりみたいな日々だった。ただ、そのままに、流されることすらなく、漂えずいる自分が惨めで、不幸で、可哀想で、ムカついた。
この荷を運んで、目的地に着けば、お金が貰える。そんな分かりきった報酬にすら感謝と敬意と謙遜を交えて、頭を下げる。ありがとうございます。と、何度言えば許されるのか。
貧困でもなく、寝るところもあり、食事に、学びまである。何一つ不自由なく感じる世界線も、十二分にある事は知っている。でも、それすらもどうでもいいくらい、私は疲れているのだ。
この道の先に、なんて、希望のある様な、ほのめかす様な、そんな淡い言葉遊びに涙を流すくらい、僕は疲れている。
今日はもう休もう。生きていて良かったと、いつか実感できる日まで安らかに眠ろう。

そんな自分に、満足はしたくない。

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