今夜は友人も呼んでタコ焼きパーティー。
しとしとと降る雨の音をBGMにして、包丁でザクザクと青ネギを刻んでいく。
ツンとした爽やかな匂いが鼻を擽り、クシャミが出そうになったが何とか堪えて、切り刻んだネギをボウルの中へ移した。
クリーム色をしたシャバシャバの液をかき混ぜながら、「ホントに固まるのか、コレ」と疑問に思う程、シャバシャバしている生地。
時計を見れば、君の帰宅時間も、約束の時間もまだだいぶ先のようだ。
試しに焼いてみるか。ウインナーで。
戸棚からタコ焼きプレートを出して、寝室から持ってきた延長コードをコンセントに差し込む。
温度調節のツマミを捻ってから、プレートが温まるまで暫し待つ。
充分に熱くなったプレートに液をおたまで流し込むと、ネギと紅しょうがをパラパラと散らし、ぶつ切りのウインナーを穴一つ一つに入れていく。
ジュウジュウと音をたてながら火が通って固まっていくのを、竹串を手に持ちながら、祈るように見つめた。
テーマ「ところにより雨」
こんな所に居ないと、わかってはいても。
どうしても探してしまう、人混みの中を、君が居ないかと。
長い髪は切ってしまったかな、僕のお気に入りだったから。
君の好みじゃなかったお揃いのアクセサリは、きっと捨ててしまっただろうね。
いらないものをとっとくような人じゃないから。
僕との思い出も全て捨て去って、キレイさっぱり忘れ去って、どこか遠い場所へと旅立っていったんだ。
君は今、どうしてるのかな。
きっと僕よりも、ずっとずっと素敵な人が君の隣に居て、毎日幸せに暮らしているよね。
どうかしてるよ、僕って。
捨てられたっていうのにさ、心から願ってるんだ。
君の幸せを。
テーマ「バカみたい」
星の見えない夜空に浮かぶ赤銅色の月。
赤い月は、こちらでは不吉なものとされているらしく。
迷信深い君ももれなく、子供の頃はソレを信じていたらしい。
赤い月が出ている時は隙間無くカーテンをキッチリと閉めて、頭から毛布をすっぽりと被り、お祈りの言葉を唱えてから寝るそうだ。
しかも朝まで目を開けてはいけないらしい。
大真面目に毎回やっていただろう子供の頃の「かわいい」君を想像して、あまりの可愛さに思わず身を捩り掌で口元を被った。
やってみたい、と隣に腰を下ろす君に言えば、渋々といった感じで頷く君。
カーテンを締め切った真っ暗な寝室で、君と二人ベッドの上。
毛布の中、手を繋いで目を閉じ、子守唄のような君の囁き声に耳を傾けた。
テーマ「二人ぼっち」
桜が咲く、その前に、ひっそりと逝ってしまったあなたの夢を見た。
たくさんのキャラに囲まれながら、また新たな命を生み出そうと白い紙に向かっている。
あなたの描くキャラクターが、世界が大好きです。
机に向かい絵を描いていたその人は、声に気付くと顔を上げ、微笑みながらこちらへ手を振ってくれた。
もっと伝えたいことがあった。
居なくなってしまう前に、あなたに言えばよかった。
今はもうどんなに叫ぼうが、あなたには届かない。
テーマ「夢が醒める前に」
おわかりいただけただろうか……、と怖い声色のナレーションの後、あからさまにCGで造られた心霊映像が流れる。
お粗末な出来のソレを見ては、「ぎゃあっ」と悲鳴を上げて胸に抱きしめているクッションで顔を覆う君。
某ジャパニーズホラー映画が世界的に知られるようになってから、幽霊といえば白いワンピースを着た長い黒髪の女、とパターン化してしまった。
少し前なら墓場を徘徊する死神だったり、夜な夜な古城に現れる豪奢なドレスを纏った首の無い女とか、亡霊もバリエーション豊かだった。
不景気だからか、幽霊も質素になったんだろう。
世知辛いなあ、とひとりそんなことを思いながら苦笑。
温かいコーヒーの入ったマグカップを両手に持って、クッションと指の間からチラチラとテレビを見ている君の隣に座った。
テーマ「胸が高鳴る」