今日は朝からツイてない。
電池切れで目覚まし時計が鳴らずに朝寝坊。
頑固な寝癖がなかなか直らず、そのまま後ろに流してワックスでガチガチに固めてやった。
リビングの観葉植物に急いで水やりをして、飲まず食わずで家を出ると駅まで競歩。
車両トラブルで電車が遅延、その影響で道路は大渋滞。
バス乗り場は長蛇の列で、仕方なく乗ったタクシーにはボッタクられた。
やっとの思いでオフィスが入るビルに辿り着いたまでは良かったが、何時もはスーツの内ポケットに入れてある筈のIDカードが何処を探っても見当たらない。
受付係に「珍しいですね」なんて言われながらゲスト用のIDカードを借りた……、返す時を想像して今から気が重い。
自分以外誰も乗っていないエレベーター内で盛大に溜息を吐いた。
まだ午前中なのにこれだけツイてないんだ、どれだけ溜息を吐こうが一緒だろう、今日はアンラッキーデー。
何事もなくオフィスのある階にエレベーターが止まって、ゆっくりと開いたドアからフロアに足を伸ばした。
直後、爪先から脇腹近くにかけて激痛が走った。
足つった……っ!!
テーマ「不条理」
薄暗い廃屋をペンライトの弱弱しい灯りを頼りに、二人互いにしがみつきながらコソコソと進んでいく。
ビビリのくせにホラーが大好きな君にせがまれて、職場の近くで開催されていた体験型ホラーアトラクションに現在、共に参加中だ。
遊園地のお化け屋敷とは違って、制限時間内に謎を解かないとゲームオーバーとなってしまうらしい。
廃屋内を徘徊する幽霊役に見つかってもゲームオーバーになってしまうので、警告音が鳴る度に幽霊役に見つからないように息を潜めて隠れなければならない。
幽霊から隠れつつ謎を解いていく、全く新しいアトラクションらしいのだが。
やっていく内に、そこはかとない懐かしさが込み上げてくる。
何だろうな、と扉の裏に隠れてやり過ごし、去っていく幽霊役の背を見てハッと頭に浮かんだ。
これほぼ缶蹴りだ。
テーマ「怖がり」
使い道のない雄のヒヨコみたいに罪人は皆ミキサーにかけちゃえば良い。
ドロドロになったのを型に流し込んでミートローフにして、刑を待つ罪人共に食わせれば、とってもエコだろう。SDGs。
罪に重いも軽いも無い、犯したのなら皆死刑にすべきだ。
罪人のくせに雨風しのげて三食昼寝付き、おまけに医療も受けられる。
究極の税の無駄遣い。
罪人に甘い世界に未来はない。
テーマ「星が溢れる」
近くの用水路沿いに植えられた寒緋桜が満開らしく、休みの日に二人で散歩。
ポカポカとした春の陽気、だが、吹く風は未だ凍えるような冷たさで、時折吹く強風に二人してワアワア言いながら目的地まで歩いていく。
すっきり爽やかな空の青と、艶やかな赤色の寒緋桜と桜らしい桜色の彼岸桜、まだまだ裸のソメイヨシノとヤマザクラ。
知る人ぞ知る、といった穴場のようで近所の年寄りだろうか、車通りの皆無な道端に家から運んできたであろう籐椅子に座って数人、のんびりとお茶会を開いていた。
風が吹く度、はらはらと舞う赤と桜色の花びらが用水路へと落ちていき、水路の水と一緒に流れていく。
きれいだね。
うっとりと桜を見上げている君が呟いた。
うん、そうだな。
同じように桜を見上げるフリをして、君の横顔を眺めていた。
テーマ「ずっと隣で」
貴方の好きなもの。
貴方の嫌いなもの。
貴方の好きなこと。
貴方の嫌いなこと。
貴方の好きな人。
貴方の日常。
貴方のこと、一目見た時から好きになってしまったので。
貴方のことなら、どんな些細なことでもいい。
知りたい。
テーマ「もっと知りたい」