しじま

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8/5/2023, 4:10:07 AM

 夏の高校野球、冬の高校バスケ。

春夏秋冬、いろんな高校生系スポーツの放送がある。

この間は空手の「型」なんてのまでテレビでやっていた。

奇声を発しながら、手足をバタバタさせてるだけ。素人にはサッパリ良さが判らない。

 それよりも、全世界に顔を晒して大丈夫かと心配になる。

服も下着も秒で剝ぎ取れる。
暇潰しにパソコンで3クリック。

全裸空手大会、全裸器械体操、全裸徒競走も、少しだけ手間は掛かるが合成は簡単。

女子だけでなく、今は男子も標的になる時代。

まあ、脳筋には理解出来ないだろうけど。

テーマ「つまらないことでも」

8/3/2023, 5:39:04 PM

 ――この部屋に入ったら、絶対に上を見てはいけません――。

 何処かのマンションの通路を滑るように移動していく途中、そんなアナウンスが聞こえて一つの扉が重々しく開いていく。

――ちなみに、上を向くとこんなのが居ます――。

高い天井から吊り下げられ、ユラユラと揺れている髪の長い女の顔の「どアップ」に背筋が冷えた。

真っ黒い穴のような目と口、捕まえようと目一杯伸ばされた手。

女のものとは思えないような、野太い唸り声が耳元で聞こえた。

 これアカンやつや!!

関西人でもないのに思わず、心の中で叫んだ。

――では、ごゆっくりお楽しみ下さい――。

開ききった扉から、どす黒く変色した無数の手が昆布のように垂れ下がっているのが見えた。

いや……手、多すぎだろ!?


っていう夢を見た。

テーマ「目が覚めるまでに」

8/2/2023, 5:54:57 PM

 いつ来ても、ツンとした臭いのするこの白い空間は好きになれない。

 薄いピンクのカーテンをすり抜けて、白いベッドの上の若い女を眺めた。

紫がかった土気色の顔は、骨と皮になり、目が落ち窪んで、鼻には管が刺さっている。

枯れ枝のように痩せ細り、カサついた腕には紫色の斑点が散らばっていた。

こちらにも何本もの太い管が刺してあり、ベッド脇の大きな機械に繋がっているようだ。

 この状態でまだ生きているのかと、哀れに思う。

人間は恐ろしいことをする。

こうなってまで、何故生かそうとするのか。

これでは、ただの……。

 フツフツと怒りが込み上げてくる、最近は怒ってばかりで何だか疲れた。

さっさと、この女の魂を狩り、生を全うさせよう。

 仄かに輝く女の魂を掬い上げ、肉体と繋がっている臍の緒のような白い糸を、自慢の長い鉤爪で千切ろうとし。

微かな声が聞こえて、女の顔を見た。

 落ち窪んだ虚ろな目から涙をポロリポロリと零しながら私をしっかりと見て、首をゆっくりと横に振ったのだ。

もう少し、待って、と。

 直ぐに廊下の方からドタドタと、ココには似つかわしくない音を立てながら男が一人、顔面をグチャグチャにさせながら女の元へ駆け込んできた。

女の枯れ枝のような腕を愛おしそうに絡め取り、血管の浮いた手の甲に優しく口付けを落す男。

擽ったそうな女の笑い声に、男は頬に鼻にキスを落としながらやせ細った女を掻き抱く。

 愛する男に優しく抱きしめられて心底嬉しそうな笑みを浮かべながら、女はちらりと私を見て小さく頷いた。

テーマ「病室」

8/1/2023, 4:04:27 PM

 常滑焼の茶色いカメの蓋を開けると、甘い果物の芳香が鼻いっぱいに広がった。

重石代わりの小皿を退けて、黒い紫蘇の層を菜箸で優しく取り払うと赤い液の中、まだ少し黄みの残る梅がギュウギュウに詰まっていた。

カビも生えていない、梅の薄皮も破れていない。上出来だ。

ササッと紫蘇を平らに均し小皿を戻してから蓋をすると、流しの上の棚から平たい竹ザルを三枚取り出して、キレイに洗い上げておく。

明日は梅を干す、晴れていたらね。

テーマ「明日、もし晴れたら」

7/31/2023, 4:31:22 PM

 薄暗い軒下の乾いた土の上に丸まって、ゆったりと深呼吸をした。

この薄暗い軒下で私は生まれ、兄弟と一緒に育った。

母は毎日懸命に獲物を捕まえて私達兄弟を養ってくれていた。

私達が眠るまで毛づくろいをしてくれた。
母と兄弟と居る、それだけで幸せだった。

 あの日、人間に捕まるまで。

母が捕まり、兄弟も捕まり、最後に私も捕まった。

 生きる意味を奪われた私達は強制的に離れ離れになり、永遠のような長い月日を、私は孤独に過ごした。

 もう一度、深く息を吸って目蓋を閉じる。

もうすぐ、開放される。
この無意味な一生から。

 さむい、くるしい、さみしい、はやく。

私を終わらせて。

テーマ「だから、一人でいたい」

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