――この部屋に入ったら、絶対に上を見てはいけません――。
何処かのマンションの通路を滑るように移動していく途中、そんなアナウンスが聞こえて一つの扉が重々しく開いていく。
――ちなみに、上を向くとこんなのが居ます――。
高い天井から吊り下げられ、ユラユラと揺れている髪の長い女の顔の「どアップ」に背筋が冷えた。
真っ黒い穴のような目と口、捕まえようと目一杯伸ばされた手。
女のものとは思えないような、野太い唸り声が耳元で聞こえた。
これアカンやつや!!
関西人でもないのに思わず、心の中で叫んだ。
――では、ごゆっくりお楽しみ下さい――。
開ききった扉から、どす黒く変色した無数の手が昆布のように垂れ下がっているのが見えた。
いや……手、多すぎだろ!?
っていう夢を見た。
テーマ「目が覚めるまでに」
8/3/2023, 5:39:04 PM