河川敷へと続く急な上り階段を息を弾ませながら上る。
スーツ姿の男性、子供の手を引く母親、杖を突き身を寄せ合いながら歩く老夫婦。
後ろから来た人達に追い抜かされていく。
あの人は、まだだろうか。
階段の中程で歩を止め、振り返る。
眼下に広がる商店街、踏切の前にあの人は居た。
まだあんなとこにいる。
気付いてもらおうと、おーい、と手を振った。
大声で名前を呼んだが、どうやら聞こえないようで店の中に入っていってしまう。
「いっておやりなさい」白いヘルメットの警備員のおじさんが赤い誘導棒を振りながら叫んだ。
青々とした草の茂る斜面を駆け下りて、あの人が居る店へ走る。
「まだ、こっちには来ちゃいけないよ」
聞き覚えのある、知らない誰かの声がした。
……もしかして、アレ、三途の川っ?!
テーマ「目が覚めると」
好きキャラ死亡率98%。
アニメでもゲームでも「このキャラ良いな」と思ったキャラは軒並み退場する。 秒で。
早期退場したキャラのグッズはだいたい出ない、悲しみが増す。
なので、ひとり寂しくノートに好きなキャラを描いたりして、たまに昔のノートを引っ張りだして眺めたりする。
ああ、このキャラ好きだったな。
なんて懐かしんだり、また新しく描いてみたり。
そのオンボロのノートが、大切な宝物なんだ。
テーマ「私の当たり前」
仕事帰り、いつものように商店街で買い物をしようと蒸し暑いアーケードを潜ると人人人、そして、賑やかな祭囃子がスピーカーから流れていた。
今日は人が多いな、と思っていたが、どうやらお祭のようだ。
所々シャッターの降りた店の前に出店が建ち並び、かき氷や綿飴、チョコバナナといった祭らしさ全開の食べ物が売られている。
小腹が空いたのでチョコバナナを一本買った。
ちょっとアレなカタチのチョコバナナを噛りつつ人混みの中、目当てのスーパーまでノロノロと歩く。
喉が渇いたので、ラムネも一本。
歩きながらポンと栓を抜いて、吹き上がりを慌てて口で受ける。
カランコロンと瓶の中で転がるビー玉が、張り巡らされた提灯の灯りを受けて、キラリと瞬いた。
テーマ「街の明かり」
打粉をしたまな板の上、うどん生地のような小さな塊を撚りをかけながら棒状に伸ばしていく。
左手を手前に右手を奥に持っていく感じだ。
ブチンと切れてしまわないように注意しながら伸ばしていって、ソレの両端を持って持ち上げる。
ネジネジになったら、油の中にポトポト落としていく。
ピチピチと油の弾ける軽やかな音。
弱火でじっくり、こんがり狐色になるまで菜箸で突っつきながら待つ。
たまにひっくり返して、狐色になったらネジネジを油の中からすくい出す。
粗熱がとれたらサクサクかりかりの、索餅の出来上がりだ。
テーマ「七夕」
誰もいなくて寂しい夕方、あの子は来てくれた。
黒く塗り潰された顔、ノイズが混じったような声、陽炎のように揺らめく輪郭。
何をして遊んだのかは忘れてしまったが、とても楽しかったのを今でも覚えている。
夕焼けと共に訪れて、黄昏時に静かに去っていくあの子。
名前も知らない、私の最初の友達。
誰も知らない、私だけの不思議な友達。
いつの間にか私の前に現れなくなった、会いたくても、もう会えない。
私の大切な友達。
テーマ「友達の思い出」