河川敷へと続く急な上り階段を息を弾ませながら上る。
スーツ姿の男性、子供の手を引く母親、杖を突き身を寄せ合いながら歩く老夫婦。
後ろから来た人達に追い抜かされていく。
あの人は、まだだろうか。
階段の中程で歩を止め、振り返る。
眼下に広がる商店街、踏切の前にあの人は居た。
まだあんなとこにいる。
気付いてもらおうと、おーい、と手を振った。
大声で名前を呼んだが、どうやら聞こえないようで店の中に入っていってしまう。
「いっておやりなさい」白いヘルメットの警備員のおじさんが赤い誘導棒を振りながら叫んだ。
青々とした草の茂る斜面を駆け下りて、あの人が居る店へ走る。
「まだ、こっちには来ちゃいけないよ」
聞き覚えのある、知らない誰かの声がした。
……もしかして、アレ、三途の川っ?!
テーマ「目が覚めると」
7/10/2023, 3:55:02 PM