『始まりはいつも』
今日もBLです。よろしくお願いします。
始まりはいつも、あなたの言葉からだった。
私の右腕になってくれ、だとか、わいんことを好いちょ、だとか、今世でもわいがいいんだ、だとか。
俺たちの関係はあなたの言葉で繋がっていると言っても過言ではないだろう。
だからこそ、今世での結婚という繋がりだけは、俺の言葉で始めたいと思った。
「だから鯉登さん、俺と結婚してくれませんか」
柄にもなく赤い薔薇の花束を差し出しながらそう言った俺に、あなたは目尻が裂けるんじゃないかというほどに瞳を見開いた。と思えばその瞳からぼたぼたと涙を溢し始める。
「ど、どうしたんですか?」
「わいがそげんこっを言うから…!」
涙と鼻水で端正な顔をぐちょぐちょにしながら俺の肩に顔を押し付けるから、どんどん服が湿り始める。
「ちょっ、鯉登さん、大丈夫ですか?」
「大丈夫じゃなか!」
「えぇ…」
ぐすんぐすんと鼻を啜る音が聞こえる。
いくらかそうしていたものか、結構長い時間が経ったような気がするが、鯉登さんが落ち着いたので、もう一度、あなたの瞳を真っ直ぐに見つめて同じ質問を繰り返した。
「俺と結婚してくれますか?」
「もちろんじゃ!幸せにすっ!」
花束を抱えたあなたが、世界の美しいものを全て詰め込んだみたいな表情で笑う。
ただそれだけのことが、どうにも愛おしくて、あなたを抱き締めた。
2日連続の鯉月です。今回エセ鹿児島弁多いんですけど大目に見ていただけると助かります。
当社比鯉登さんが泣き虫です。そんな鯉登さんも愛しい月島さんいとしげら。
月島さん目線しか書いてないのでそろそろ鯉登さん目線も書きたい今日この頃です。
『すれ違い』
BL要素あります。むしろ要素どころかがっつりです。
すれ違いざまにあなたを見た瞬間、それは運命なんだとわかった。
嘘だろ。今世でも出会うなんて。
あなたには、今世こそは俺を知らないでほしかったのに。世間一般の幸せを手に入れてほしかったのに。
前世での伴侶に対する感情とは思えないほどに後悔した俺とは正反対に、あなたは顔色ひとつ変えずに通りすぎたから、神様はまだ俺を見捨ててなかったんだな、なんて思った。
あなたが俺の腕を掴むまでは。
「やっと見つけたぞ、月島ぁ」
さっきのは何だったのかと思うほどに瞳を歓喜の色に染めたあなたが、その顔を同じように喜色を全面に散りばめた声色で俺の名を呼ぶ。
「あ、ちが、俺は、月島じゃないです」
「何を言っちょるか。わいは月島基だろう?」
咄嗟に誤魔化した俺に、あなたが不思議そうな瞳を向ける。
「違いますよ、鯉登さん」
「じゃあなんでおいの名がわかるんだ」
間違えた、と思ったときにはもう遅かった。
冷や汗が背中を伝う。
「ないごて誤魔化すんじゃ月島ぁ」
「あー、えっと、その…」
口ごもる俺に、あなたが捨てられた子犬のような瞳を向けた。
「わいはおいが嫌になったんか?」
「ちがっ…」
あーもう顔がいい。咄嗟に否定しちゃったよ。何してんだ俺。
「じゃあないごて!」
前世とそっくりの顔で全く同じ表情で拗ねて見せるから、もう誤魔化すことなんてできなくなってしまった。
「あなたには、幸せであってほしかったから」
「おいの幸せは月島と一緒にいることだぞ?」
「そうじゃなくて…!」
「月島」
俺をさとすようなその声は、晩年の鯉登さんと同じもので。
自然に耳を傾けさせるような、そんな力を持っていた。
「おいの幸せはおいが決める。おいは月島と一緒にいたい。月島はどうなんだ?」
そんなにまっすぐな瞳でまっすぐな感情を渡してくるから、言うはずのなかった本音が溢れてしまった。
「そりゃ、俺だってあなたと一緒がいいですよ」
「ならそれでいいじゃないか」
嬉しさと愛おしさを全面に押し出したような顔で笑うあなたがどうしようもなく愛しいと思ってしまった。
またあなたの隣にいてもいいんだろうか。
あなたの幸せは、俺の幸せと重なるって、信じてもいいんだろうか。
そんなことを聞かなくても少し震えながら一生懸命に答えを教えてくれるあなたの手を握った。
ゴールデンカムイより鯉登さんと月島さんの二次創作です。またですね。いつも通りの現パロです。
鯉登さんが最初に無反応だったのは話しかけていいのか迷ったからです。
月島さんの表情を見て話しかけることに決めたらしいです。月島さん転生したらちょっと顔に出やすくなったんですかね。
とりあえず幸せになってほしいです。
『秋晴れ』
秋晴れの日にはやけに空が高く見えて。
そんなときに隣で空が綺麗、なんて笑うあなたの姿がないことに少し切なさを感じました。
この空の青さを言い表す言葉を教えてくれたあなたはもういないのに、私はこの空をどうやって慈しめばいいんでしょうか。
『忘れたくても忘れられない』
あなたの微笑みひとつで、忘れたくても忘れられない面影を追い続ける私が、少し報われたような気がした。
忘れたくても忘れられない痛みがあなたにあることなんて、想像に難くなかった。
その痛みはあなたにしかわからないし、私たちに知る術はないのだから、あなたが耐えきれなくなったときに、手を伸ばせる存在でありたいと思った。
俺の忘れたくても忘れられない過去とか、痛みとかをあなたの一言で全て覆い隠してしまうほどに、あなたは眩しい人だったから。あなたの隣にいたいと思ってしまった。
あなたの隣で、世界の美しさを知りたいと思ってしまった。
思いついたシチュエーションはいくつかあったんですけど繋げられなくてこうなりました。無念。
『やわらかな光』
私にとってのあなたは、美しくて、やわらかくて、鮮烈で、何よりも求めていた光だった。
やわらかな光のようなあなたが、これ以上傷ついてほしくないと思った。
それが心であれ、身体であれ、あなたの光が鈍くなるのが、やけに嫌だった。
人一倍優しいあなたには、この世界が人一倍美しく映っていてればいいな、なんて柄にもなく願ってみたりもした。
恋だとか、愛だとか、そんな言葉で言い表すにはあまりにも複雑すぎる思いを抱く私に、あなたは今日も優しく笑いかけるから。また、そんな思いが肥大化するんだ。
2作目、途中で何が言いたかったのかわからなくなりました。とりあえずあなたを大切に思っているということです。よろしくお願いします。